このレビューはネタバレを含みます
「恵みに感謝する気持ち」
終始淡々としたナレーション。
そこには「ザ・コーヴ」のような盛り上がる様なシュチエーションはないです。
捕鯨で生活をする人たちの歴史や文化、それは日本でもノルウェイでも基本的に変わらない。
半年間決められた数の決められた種類の鯨を捕る1艘の捕鯨船が、どういう風に鯨を捕まえるのかや、鯨と日本の捕鯨の歴史、そして捕まえた鯨をどう解体していくのか、それは残酷という風景とはまるでかけ離れたある意味芸術的的でもありました。
捕まえた鯨1頭を全て無駄にすることなく、資源として利用する、それが食文化や芸術文化として根付いてきた歴史。
見ててふと思いました。
確かに今の時代、鯨を日常的に食べる風習というのはなくなって来てしまっているけれど、もし「ザ・コーヴ」に出てきている人たちの言うとおり、捕鯨やイルカ漁をやめてしまったらどうなるんだろう。
今は食べないかもしれないけれど、今の世の中、狂牛病とか口蹄疫とか鳥インフルエンザとか蔓延している時代。
いつか、肉食獣が食べられなくなって、たんぱく資源を再び鯨で摂らなくてはならなくなったとすれば、今、細々と頑張っている鯨を捕る漁師の人たち、その捕まえた鯨を、芸術の様に解体する人たちがいなくなってしまったら…
一度失くしてしまったものは、なかなか取り戻すことはできない。それは野生動物を保護して残していくことと、何ら変わらないと思うし、一長一短で出来ることではないわけで…
単に文化が無くなるというだけでは済まされない事だと改めて思うし、それを失くしていいものなのかと。この作品はあくまでも客観的に淡々とそこに生きる人たちを撮影しています。
「ザ・コーヴ」で話題になっている今だからこそ、改めて沢山の人たちに見てもらいたい作品です。
単なる鯨を捕るだけだけど、そこには自分達と鯨の一期一会があって、だからこそ無駄にしないという漁師の思いが、観る人に感じてもらえる何かがあるはずだと思います。