フラハティ

戦争のない20日間のフラハティのレビュー・感想・評価

戦争のない20日間(1976年製作の映画)
4.0
たった20日間の休暇でいったい何ができるのだろう。


アレクセイ・ゲルマンの長編監督作としては二作目。
処女作が上映禁止とされ、本作も小規模の上映にならざるを得なかった。
正直、上映の制限を受けるような内容じゃない気もするが…。


爆撃が起きた。
不運にも一人の中将が命を落とした。
休暇の前日にも関わらず、運が悪い。

列車で7日間もかかるタシケントの街。
友人の訃報を伝え、妻との離婚を成立させ、映画制作のアドバイスをする。
戦火を離れ日常に戻った瞬間、日常がなぜか非日常に感じている。

戦場は異常な世界。
戦場から遠く離れた地では、夫の帰りを待つ妻たちの姿。
逆に新しい男を作った妻たちの姿が映される。
従軍記者である男は、戦地から遠く離れた故郷も、見えない戦いを強いられていることを知る。
戦争は日常を非日常へと変え、非日常を日常へと変える。

タイトルである『戦争のない20日間』は、男が休暇としてもらった20日間であるが、実際のところ戦争のことが頭から離れることはない。
本当に"戦争のない"日常が訪れることはやはり難しいこと。
戦場を多く映すことはなく、平和である場所から垣間見える異常な景色。
多くを語らない主人公の周囲の人々により浮き彫りになる、戦争に対するわだかまり。
自然とわいてくる違和感。


映画の技法とか、カメラワークがどうとかは無知なので割愛。
『神々のたそがれ』ほど混沌とはしておらず、内容的にもわかりやすい。
本作は政府批判というよりは(そんなことしたら上映自体できないけど)、戦争という物事により浮かび上がる、ありのままの描きに重きが置かれている。
出来る限りのリアリティを描こうとしたゲルマン。
多くの場所で会話があるが、字幕で表示されない部分もある。
綺麗すぎる部分ばかりではなく、あくまでも本来あるべき環境にこだわっている。


列車に乗ってから、ある男の話の流れは一方的でしんどいものがあるが、寡黙な男の故郷への旅路の終点には唸らされる。
彼はこの男ほど語ることはないから。

自分がいるべき場所と、本心から望んでいる景色。
あぁ懐かしき爆撃。
フラハティ

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