Shelby

召使のShelbyのレビュー・感想・評価

召使(1963年製作の映画)
3.9
最後まで清々しいほど全く救いがないところが、逆に潔い。人の心理を巧みに操り、最後には召使と主人である立場が逆転してしまった2人の関係。
召使であるバレットに徐々に侵食されていき、何もかも食い尽くされていく様は流石にゾッとする。すべて計算されて近づいてきたのだと考えると、善意を装い近付いてきた悪意が最も恐ろしい。だって防ぎようがないもの。

でも嫌いじゃないんだよなあ、このダークな雰囲気。1番のお気に入りはベラとトニーが関係を持ち、夜にこっそり1階で逢瀬を重ねるシーン。肝心の場面を革張りの高級椅子の背もたれで隠し、敢えて見せない。
その後ゆっくりとカメラを引いていき、全体を映す。間接的だが逆に唆られ、目が離せなかった。

初めの頃の爽やかさ満点だったトニーはどこにもおらず、自分で考えることを辞めまるで廃人のようなトニーの姿。
白黒映画が退廃的な雰囲気を更に助長させ、怪奇的にも思わせる見せ方。
軽々しくオススメだなんて口にはできないけれど、私にとっては充分好きな部類に入る映画。
Shelby

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