あしからず

召使のあしからずのレビュー・感想・評価

召使(1963年製作の映画)
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これは主従関係逆転劇とみせかけた共依存精神的ゲイ映画である。と、思ったものの全く見当違いかなとドキドキしていたが似たような考察ブログがいくつかありなんだか安心。

主人のトニーと召使のバレットの関係性の変化は面白いを通り越して暗闇の中で沼に足を踏み入れてしまったような感覚。はまって初めて底なし沼と気付くももう遅い。同じような主従関係を扱ったウッドハウスの小説のバーティーとジーヴスの関係性のちょうど良さが身に染みる。
「女王陛下のお気に入り」でもあった魚眼レンズを用いた演出の歪んだ虚像が象徴的だった。

ただの主従関係逆転劇ではないと感じるのは、中盤のバレットが荷物をまとめて家から出て行ったあとのシークエンス。ベッドで伏せるトニーの側の壁に貼られた筋肉むきむきの男たちの写真のクローズアップ。その示唆するもの。
その後の2人の関係や謎のキャッチボール、鬼気迫る鬼ごっこ。今考えるととあの鬼ごっこはトニーの精神的な部分までもこじ開け、覗き込んでいるようでなんとなく背筋が寒くなる。そしてあのラストへ。

目は口ほどに物を言うというが、この作品は非常に役者の表情が雄弁だった。その表情で不快や媚びや虚無をセリフ以上に伝えてくる。
ロージー監督の作品はあと唇からナイフしか観てないけど他の作品も顔アップ多いのかな
あしからず

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