朝田

召使の朝田のレビュー・感想・評価

召使(1963年製作の映画)
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これはとんでもない大傑作。ジョゼフロージーの映画は初めて見たのだが、めちゃくちゃ面白かった。侵入者が家を乗っ取る話という意味でパゾリーニ「テオレマ」、キムギヨンの「下女」、ポン・ジュノ「パラサイト」、等々様々な作品を思い起こさせるプロット。しかし、この作品はそれらよりずっと耽美的。舞台となる屋敷の中にあるバロック調のインテリアは見ているだけで眼が楽しい。なおかつ、室内にあるものが非常に巧くサスペンスフルな演出に用いられている。階段を使ってあえて召使たちの暴れる姿を直接見せずシルエットと音だけで見せる事でより不気味さを増させたり、蛇口からこぼれる水滴の音を心臓の鼓動音のように鳴らし緊張感を高めたり、歪んで見える鏡を使って関係性の逆転を表したりと。機能的にディテールが作用していくためずっと密室で繰り広げられる話だが飽きさせない。画面がずっと充実している感じ。さらに、「パラサイト」や「下女」には無いような同性愛の要素を匂わせる事でより、侵入者と家の持ち主との関係性が複雑化しているし、侵入者自身の目的の不可解さも増している。D・ボガードの妙に軽やかな演技も相まって良い奴なのか悪い奴なのか、狂人なのか計算高い理性のある人間なのかさっぱり分からない。そこが恐ろしいあたりだし、他の「侵入者モノ」と一線を画す辺りだと思った。不条理劇としてもある種の密室スリラーとしても大変格調高い。退廃的な雰囲気で綴られる悪夢を堪能しました。
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