菩薩

男はつらいよ ぼくの伯父さんの菩薩のレビュー・感想・評価

3.5
シリーズ42作目、マドンナ:後藤久美子(満男の)、檀ふみ(一応寅さんの)。

このころになると渥美さんの体調も思わしくなく、メインが満男のおっかけに、寅さんはその指南役へと役割変更。動かぬ体に無理し、必死に演技をする姿は多少の痛々しさを感じますが、それでもやはり渥美清を渥美清足らしめている物はその四角四面のにっこり笑顔なのだ、改めて実感するに至ります。

「ぼくの伯父さん」と聞いてまっさきに思い浮かべるものはと言えば当然ジャック・タチ、寅さんにしても菊次郎にしても、いわゆる世間からはみ出してはいるけど、ある種魅力的なダメ人間キャラの下敷きとして、はっきりユロ伯父さんが息づいていることを感じずにはいられません。かくいう私にも去る1月に甥っ子ちゃんが誕生いたしまして、今からその三人のうちどのキャラでやってやろうかと考えあぐねているところですが、今のところやはり寅さんが一歩リードです。

成長した満男と初めて酒を酌み交わすシーンであったり、恋に焦る満男の背中を優しく押してやる寅さんは相変わらず素晴らしいのですが、いかんせんゴクミが…可愛いだけでなんとも言えないし、今作のMVPは何を隠そう笹野高史、確か笹野さんの「お金あげるから~」はアドリブだったような気がします。なぜか今後も多用される徳永英明…謎すぎる。それでも江戸川のほとりからはるばる愛するゴクミのもとへとはせ参じる満男の熱さは買いたいところで、そんな満男を単なる「不良」呼ばわりする尾藤イサオに対し、真っ向から立ち向かっていく寅さんの親心が泣かせます。終盤、柴又へ帰還する満男を温かく迎えるおなじみの面々、その中に寅さんの姿はなく、遠い地の赤電話の受話器越し、いよいよシリーズも佳境に入ったことを感じずにはいられない、なんとも寂しさ溢れるシーンです。これ以降回を追うごとに衰弱の度を深める寅さんではありますが、それでも死ぬまで恋をすることだけは止めません。ここまでくればもうひと踏ん張りです、寅さんマラソンランナーの皆さま、完走目指して頑張ってください。
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