TAKU

スティーヴィーのTAKUのレビュー・感想・評価

スティーヴィー(2002年製作の映画)
5.0
新宿Ksシネマのムヴィオラ特集上映にて鑑賞。

超傑作。今まで観たドキュメンタリー映画の中でもベストかもしれない。ドキュメンタリーでしか描けない生身の人間の葛藤や苦しみ、そして感動がこの映画にはあった。

ドキュメンタリー監督のスティーヴ・ジェイムズが10年ぶりにイリノイ州を訪れるところから映画は始まる。彼がイリノイ州へやって来た理由は、大学時代に問題のある少年の更生を助ける「ビッグブラザー」というボランティア制度で世話をしていたスティーヴィーという青年に再会するためだった。しかし、成長したスティーヴィーは10回以上の逮捕歴を持ち、無職同然の生活を送っていた。監督は10年の間にスティーヴィーの身に何が起きたのか軌跡を辿る映画を製作することにする。しかし、彼が親戚の娘をレイプした容疑で逮捕されたことからドキュメンタリー製作は思いもよらない方向へ向かう。

幼少期の母親からの虐待によって、お互いに憎み合っていたスティーヴィーと彼の母親が、レイプ容疑を機に家族の溝を徐々に埋めていく過程は衝撃的。しかし、それ以上にガツンときたのは、スティーヴィーを助けるためにカメラを回し始めた監督が、撮影を続けるにつれてスティーヴィーを単なる素材としか見ていないのではと疑問を持ち始めるところ。被写体だけでなく、撮る側の価値観も揺れ動くようなドキュメンタリーは今までにあっただろうか。

そんな監督がスティーヴィーに寄り添って生きていこうと決意するラストと、エンディングで流れるウィリー・ネルソンの『The Maker』に嗚咽して号泣。人と人とがお互いに支え合うことの崇高さに、劇場が明るくなった後も涙が止まらなかった。

多くの人の価値観や人生を変えるであろう傑作なのに、日本ではDVD化されておらず、今回の特集上映が国内最終上映。どうにかして、日本語字幕がある状態でまた観れないものか。