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南極料理人のkmtnのネタバレレビュー・内容・結末

南極料理人(2009年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

沖田修一監督、キツツキと雨に続き2作目。
キツツキと雨が、とても好きだったので、以前から興味のあった今作を視聴。
結果、大満足の映画でした。
これぞ邦画がやるべきコメディ映画という感じのテイスト。


なんとなく手触りが近い風に感じたのは、漫画の方の孤独のグルメ。
「モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず自由でなんというか、救われてなきゃあダメなんだ」という五郎のセリフを思い出す。
最近よく聞く、食べ物を食べた時にエクスタシィを感じる変な食漫画に対する嫌悪感みたいなものの正体と、それの対局に位置するスタンスがとても好感が持てた。


劇中で彼らが食べているモノって、特段美味そうなわけではない。
日本に住んでいればもっと美味しいものなんて山ほどあるだろうし、バリエーションも無限大だ。
終盤のある種、キーアイテムである醤油ラーメンだって、実際のところそこまで美味しいものじゃないと想像できる。
だけど、あの空間で彼らが一心不乱に食べる光景はとても説得力のある描写であり、食事というものの存在意義には美味さや、腹を満たすということとは、また別のファクターが存在することに気がつかされる。
そのファクターこそ、前述の孤独のグルメでのセリフ「モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず自由でなんというか、救われてなきゃあダメなんだ」ということなんじゃないかと思う。


彼の日常が終わり、また日本での日常が始まるというのも、映画の終わらせ方として満点だと思う。
物語の始まりが南極に行くことなのだから、日本に帰ることは、とても綺麗な終わり方だ。そしてとても切ない。
南極での生活が良いものとは言えないかもしれない。実際、この映画を観ても、私自身、南極に行きたいとは思わない。
でも少なくともそれは愛すべきものだとは思う。そしてこの映画が語ることは、自分自身の日常にも落とし込める、とても素敵なメッセージだと思うのです。


一番最初に書きましたが、こういう映画こそ、邦画がやるべき作品だと思う。次は横道世之介を観てみよう。
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