ジェイD

劇場版ポケットモンスター/ダイヤモンド・パール ディアルガVSパルキアVSダークライのジェイDのレビュー・感想・評価

4.3
神々の戦いという不条理の中でたった一つの目的を果たすためだけに、人々に誤解され嫌われながら神に楯突いたポケモン映画で最も不器用なダークヒーロー。DP世代にはたまらない王道ピカチュウザムービー。

コンテストに出場すべくサトシ一行が訪れたのは湖に囲まれたアラモスタウン。ツアーガイドを務めるアリスやその幼馴染で科学者のトニオとの出会いの最中、街の異変と悪夢を見せるポケモンダークライを目撃する。時空の狭間で起こる神々の戦いが街に迫るとき、壮絶な奇跡が起こる。

25周年映画祭として復活上映してたので改めて劇場鑑賞。子供ながらに劇場で観て手に汗握りながら感動した感覚が今でも残る今作、長年拗らせまくった思い出補正を取り去ることができぬまま挑み、結局いい歳こいてボロ泣きしてしまった。正直今から書くのもレビューとして成り立っていないかもしれない。

ポケモン映画10周年作品ということで相当気合が入っていたように思える。"バトル""ミステリー""時を超えたロマンス"をバランス良く配置しててとても観やすい。深堀しすぎないことで妄想補完を促しやすい空白もあるので、あまりダークライに感情移入しすぎるとしんどくなるので注意。

毎回舞台となる街のデザインが素敵なポケモン映画ですが、今作の舞台アラモスタウンのモデルはスペイン・バルセロナ。ガウディによるサグラダ・ファミリアやグエル公園に似た、ゴーディによる時空の塔や庭園が広がる。露骨なオマージュだが、広がる欧風街路は見応えあり。

音楽もかなり特徴的で、妖しくも勇ましいダークライのテーマや"名曲"オラシオンなど脳裏にこびりつく。主題歌のサラブライトマンの曲も歌詞を読み解くとダークライと作中のとあるキャラに寄り添いすぎてて前向きだけどどこか感傷的に。

しかし今作の1番の魅力はダークライとかいうコミュ障で不器用、そして一途な暗黒ポケモンの存在。庭園に棲みつき、彼の近くで眠った者に悪夢を見せるという恐ろしい存在だが、なぜ彼が庭園に棲みつき、神々が荒れ狂う無謀な戦いに身を投じるのかを考えると…。えっとポケモン映画ってさ、言っても子供向けだよね?数十年も愛に近い感情を拗らせ続けた挙句、その人の思いに報いるために独りで命張るのホントに不器用でカッコいい。

嫌われ者に寄り添う慈愛を持った少女、1体と1人の姿を見守った天才建築家。そんな彼らの末裔である2人の若者が時を超えて共に街を救うべく立ち上がる構造も好きです。舞台装置として機能してないようで込めてる思いが強すぎる時空の塔の強火演出よ。

当時のゲームソフトで伝説枠として現れたディアルガとパルキア。そんな奴らを差し置いて、まさかのダークヒーロー属性とカッコ良さを注ぎ込んで沼(ダークホール)を作り出した今作。いつまでも好きです。
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