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飼育のkarmapoliceのレビュー・感想・評価

飼育(1961年製作の映画)
3.5
大島渚監督、田村孟脚本、大江健三郎原作、三國連太郎、ヒュー・ハード主演、1961年作品。1945年ある山村に墜落した米軍機の生き残りである黒人兵士と村人との異様な関わりと顛末を描いた物語。

大江健三郎が23歳で書いた芥川賞受賞小説がベースになっているが、23歳の若さでよくこんな人間の醜さばかりを描けたなと呆然とするばかりだ。タイトルの「飼育」は黒人兵士が村人に閉じ込められ鎖で繋がれた状態で管理下に置かれ、飼育されているかのような状況であったことに因んでいるらしい。

露骨過ぎる差別表現にも嫌気が差すし、村人たちのご都合主義など、そのあまりにニヒルでシニカルな視点は、どこか人間そのものを滑稽としているようで、妙な説得力を感じてしまった。そんな事が観ていて楽しい筈がない。しかし気になる・・・・。

大島渚監督の演出も素晴らしく、小説とは違うらしいラストシーンもどこか神秘的でもありけっこう美しく観えた。音楽はイマイチだがおそらく「戦メリ」以上に大島渚監督らしく、大江健三郎らしさも表現されているような気がした。観ていてある意味不愉快な気分になるが、惹きつけられたし、観応えはあったと思う。
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