シズヲ

地獄への道のシズヲのレビュー・感想・評価

地獄への道(1939年製作の映画)
3.7
伝説の無法者ジェシー・ジェームズの生涯。大陸横断鉄道の建設に着手する鉄道会社が「安値で強引に土地を買い叩いて住民を追い立てる横暴な権力者」として書かれているだけに、それに相対するジェシーもまた殆ど義賊的な扱いなのが如何にもこの手のアウトロー物らしい。本作はそういった構図を「冒頭のモノローグによる状況説明→鉄道会社の横暴とジェームズ兄弟の反抗→強盗団誕生のきっかけとなる事件」と序盤でスムーズに示しているのが秀逸。

全編を通してメロドラマ的な内容で、ジェシーのアウトローとしての活躍以上に「義賊としてのジェシーを理解しつつも彼の生きざまに葛藤する」ヒロインとの恋愛が話の中核を成している。愛の擦れ違いがジェシーの義賊としての堕落のきっかけになったり、本筋と密接に関わってジェシーの心情を強調しているのが面白い(個人的に召し使いのピンキーから赤ん坊の話を聞く下りが穏やかで好き)。演出も全体的に堅実でそこまで劇的な雰囲気は無いんだけど、それでもフランクによるジェシー救出の一連の流れなど作中では静かな緊張感が印象的に描かれる。アクションでも序盤の列車強盗のシークエンスや崖から飛び降りる逃走シーン等で魅せてくれるし、ランドルフ・スコットを始めとする脇役勢も良い味を出している。

演出の性質的に大きく引っ張るような山場もあまりなく淡々と話が進むし、展開は地味に見えるところがある。ヒロインがジェシーと結ばれてから精神的疲弊で参るまでの流れも駆け足だったりと布石や溜めもやや大雑把な印象。ジェシーの兄フランクを演じるヘンリー・フォンダの役どころが思ったよりも目立たないのも残念。でもラストの物静かな寂寥感も含めて安定した風格がある西部劇だ。
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