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神様のくれた赤ん坊のtakのレビュー・感想・評価

神様のくれた赤ん坊(1979年製作の映画)
3.5
死んだ女が遺した男の子。父親の可能性がある5人の一人とされた主人公(渡瀬恒彦)が、その子を連れて父親探しの旅に出ることに。同棲中の駆け出し女優(桃井かおり)も巻き込んで、三人の旅は、尾道、中津、別府、熊本、天草、長崎、唐津、そして若松へ。

コメディアンを使わない人情喜劇ってところがいい。人生のハプニングが自然な笑いに変わる。嵐寛寿郎、吉幾三、泉谷しげる、吉行和子、樹木希林、登場する誰もが印象に残るいい仕事。

このロードムービーは子供の親探しが目的だけど、一方で桃井かおりが自分のルーツを訪ねる旅でもある。母親の素性を知るエピソードが心に残る。

「私たちの考えてることって、同じなんじゃないかしら」
映画前半、端役女優の彼女に与えられた短い台詞。このたったひと言の台詞が、後半違う意味をもってくる。それが感動的な涙を誘うなんて見事。

子供そっちのけな話になっている気もするが、同じ題材を今撮ると、きっと子役で泣かせるあざとい映画となっちゃうのかも。あくまでも主眼を主人公二人の心の成長に置いてる潔さがいい。

クライマックスに登場する北九州の若松南海岸。大正時代に建てられた旧古河鉱業若松ビルなど歴史ある建造物が映し出される。北九州のランドマーク、かつて東洋一と呼ばれた若戸大橋。橋の歩道を歩きながら、主人公二人は大切なことに気づくのだ。今は歩いて渡れないだけにとても貴重な場面。エンドクレジットは空撮でその真っ赤な橋が映される。
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