ひろ

12人の優しい日本人のひろのレビュー・感想・評価

12人の優しい日本人(1991年製作の映画)
3.8
三谷幸喜の戯曲「12人の優しい日本人」を中原俊監督が映画化した1991年の日本映画

映画好きならタイトルからすぐに、アメリカで50年代に製作されたシチュエーション・サスペンスの金字塔「十二人の怒れる男」が頭によぎるだろう。まさに、その映画を元に三谷幸喜がシチュエーション・コメディとして書いたのが、この「12人の優しい日本人」だ。

ほぼ陪審員室だけで繰り広げられる「十二人の怒れる男」を観て、脚本の魅力だけで、映画は成り立つことに感動したが、この作品もほぼ同じ構成で進んでいく。

もちろん、当時の日本では裁判員制度も制度化されてないし、あくまで日本に陪審員制度があったらどうなるか?というのが面白い。

いきなり、元映画と真逆の展開から始まるところは、ひねくれ者である三谷幸喜らしい。元映画では、人種問題や正義のアメリカといった、アメリカ人らしい展開になっていたが、この作品は見事なまでに日本人らしい。

責任を負いたくない。同情心、なんとなく、他人の意見に流されるなど、優柔不断な日本人らしさが随所に散りばめられている。軍隊ないから戦争には参加できないけど、支援物資や金を払って、私たちは人殺しじゃないって言っているんだもんな。それでも、日本人も捨てたもんじゃないぞって思えるところもあって楽しい。

元々、三谷幸喜率いる劇団・東京サンシャインボーイズのために書いた戯曲だから、舞台っぽい脚本。作品内で大活躍している相島一之と梶原善は舞台にも同じ役で出演していたし、三谷作品には欠かせない俳優。

全体的に地味目な脇役を演じる舞台出身の演技派俳優で固めてるのがいいね。その中で、まだ俳優デビューしたばかりの豊川悦司が目立ってたけど、彼の使い方が絶妙だった。

三谷幸喜監督・脚本作品は好きだけど、この作品も脚本だけだが、彼のユーモアと脚本センスが十分発揮されている。「十二人の怒れる男」という名作を、ここまで自分色に染めちゃう三谷幸喜ってすごい人だなあ。
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