もっちゃん

ストーカーのもっちゃんのレビュー・感想・評価

ストーカー(1979年製作の映画)
4.0
SFと呼ぶにはあまりにもSF描写は少ない。不思議な感覚である。

突然の隕石の落下か何かが起こり、「ゾーン」呼ばれる区域が発生する。そこは人間が暮らせる地域ではなくなり、俗世から隔絶され、立ち入りを禁じられる。とまあ、ここまでの設定だけで明らかにチェルノブイリを想像するのだが、これは原発事故が起きるよりも前に作成されたのものだからこれまた不思議である。
そのゾーンの中に入って案内をすることができるのが「ストーカー」と呼ばれる者である。そしてストーカーと作家と科学者の三人でゾーンの中に入っていく。好奇心と希望を胸に。

興味深いのが、ゾーンの外側(安全地帯)ではセピア色、ゾーン内ではカラーで画面が構成されている。ゾーンの中では水を得た魚のようにはしゃぐストーカーにとってはゾーンのほうが現実世界のように感じるということだろうか。いずれにしてもこの演出が効を奏してセピア色の世界が何とも無機質に感じるのは素晴らしい演出表現である。

そして三人が待望の「部屋」に到達したときに土壇場になって躊躇するのは人間の根源的心理を見せられているようで面白い。本当に得たいものがあれば、人間は躊躇してしまうものだろうか。真理が目の前に存在すれば、怖くなってしまうものだろうか。