人は常に何かの「役」になっている。意識的にそれを演じている者もいれば、無意識のうちにそれを担っているものもいる。そして、できるだけいい役を演じようと、自分の可能性ではなく、そうなるための必要性を追及する。人の世はさながら小泉今日子が作るドーナツのようなものであって、型にはめられドーナツになれる者の陰には、くり抜かれ続けた挙句ドーナツになれなかった者もいる。それが、この映画におけるホームレス達の様な存在であり、役所広司である。人々が心地よく買い物ができるのは、香川照之が就いた清掃員の様な方々がいてこそだが、そこになかなか光は当てられ無い。社会が円滑に活動していくためには、陰でその歯車を回している人々が沢山いるわけだ。この映画は、香川照之の目線から見れば再生の物語、小泉今日子の目線で見れば再出発の物語、そして子供達の目線で見れば発見と成長の物語である。最後にはしっかりとした救いが待っている。人生に行き詰まったり、悩んだりした時に観るには最適な作品だと思う。
なにより、この映画の優しいところは、まだ笑えるシーンが随所にあるところ。その点で言えばアンジャッシュの渡部じゃ無い方の人は本当にいい役割を演じている。エロ林に幸あれ。
後、道路の使い方。『ダウン・バイ・ロー』とは逆で、「家路」に繋がるY字路。そして、四方から集まり「社会」に押し出されていく十字路。人生そのものを描いた様な印象的なシーンだなと思う。