おぶさん

海と毒薬のおぶさんのレビュー・感想・評価

海と毒薬(1986年製作の映画)
3.7
1945年第二次世界大戦のなか起った
九州帝国大(九州大学)生体解剖事件
その実態を遠藤周作氏が「海と毒薬」
として出版

幼い頃、九州大学の建物を見るたび
「なんて広くて、大きくて、古くて立派な建物なんだろう…」と思っていた。
でもこの立派な建物で、そのような恐ろしい事件が行われていたと知った時は、かなりショックを受け、初めて「海と毒薬」を読んだ。
何度も何度も読んだ。
今回、初めてこの映画を鑑賞。

アメリカ軍捕虜を生きたまま解剖して
8人の犠牲者を出した
いくら戦時中とはいえ、
なんとも受入れ難き事実です。

奥田瑛二氏が演じる勝呂
彼は生体解剖中、恐怖のため
ただ傍観するしかなかった
渡辺謙氏が演じる戸田は解剖中
「生々しい恐怖、心の痛み、
激しい自責の念を感じない」
自分に驚いていた
受入れ難き事実を目の当たりにすると
人は心を殺してしまうのか

解剖に立会った軍人は解剖後
所望した肝臓をどうしたのだろうか?

人を助けるための医者が
病院内の権力闘争や
医療の発展のためと平気で
生きた人間を殺してしまう
人間の倫理観を問われるが
生と死の間で生きていた戦時中
人の倫理観などという意識は
麻痺していたのかもしれない。

現在は、あの広い土地
何か新しい街でも出来るのか?
九州大学は跡形もなく崩され移転した
4月にはこの生体解剖の事実を
証言し続けた東野氏が亡くなった

この事実は遠い過去の出来事として、
忘れ去られるのかなぁ…
おぶさん

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