伝説がなぜ伝説足り得るを理解するには、それ相応のリテラシーが必要ですね…。
1985年公開の伝説のカルト作品、デジタルリマスターで復活!(が、準新作になったのでレビュー。)因みに大昔に一回観てますが、全く覚えてないので、初見のような心持ちです。
この作品のカルトたる所以はキャスティングや突飛な演出など、主に表面的な部分。伝説たる所以は…監督が手塚眞=漫画家故・手塚治虫先生の御子息である点、と言い切ってしまうと失礼にあたるかなぁ?
(冒頭のみ)モノクロ。レトロフューチャー的な雰囲気のキャバレー。気取った紳士淑女達。
紹介を受けステージに上がったのは…
銀色のド派手なジャンプスーツに身を包んだ男達。カンとシンゴの二人組、スターダストブラザーズ!彼等はダストだけどスターだ!なんせ彼等だけカラーだからね。
愉快な振り付けでご機嫌なナンバーを披露して、パラ…パラ…と拍手を受ける。それからグダグダなMCに突入。
(こっから総天然色↓)
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彼等が語り出したのは、スターダストブラザーズの過去の物語。
元々二つの別のバンドのボーカルだったカンとシンゴ。オシャレで甘いルックスのカンのバンドは大人気。曲は良いが、昭和の芸人みたいな雰囲気が漂うシンゴのバンドはなかなか人気が出なくて、カンのことをやっかんでいた。
そんなある日、とある大きい(らしい)芸能事務所に呼び出された2人。
怪しげな事務所の怪しげな社長は2人に告げる。
「2人でグループでデビューして欲しい。君たちは生き別れの双子、スターダストブラザーズ!」…悩みに悩んで(結果金に目がくらみ)デビューを決めた2人。事務所ビルで知り合った歌手志望のまりもちゃんをファンクラブ会長に据え、スターダストブラザースの快進撃が始まった!
ド派手なプロモーションの甲斐もあり、スターダストブラザーズはたった一曲でスターダムにのし上がる。
テレビに雑誌に引っ張りだこ。街もまともに歩けないほどの人気ぶりに、まりもちゃんは寂しそう。そしてシンゴは、カンに対するコンプレックスにより酒に溺れるようになっていく…。
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シンゴ役に、ニューウェーブバンド“8 1/2”のボーカリストの久保田慎吾。
カン役には高木完!…と、ビックリマークつけたところで、所詮は一括変換も出来ない知名度なのでしょうか?公開年度は丁度タイニーパンクスのデビューと同年です。
とにかく若かりし完ちゃんが可愛い!オザケンとか、星野源とかに通じる柔らかいオーラ。いっつもニコニコしてて、ピンクのテッズコートや赤いボンデッジパンツがホントよく似合う。
ロマン優光さんのいわゆるサブカル本の中では“サブカルとは町山智浩”という結論になってましたが、自分の中ではサブカルの発火点は“高木完×藤原ヒロシ”って事になってます。勿論町山さんが元・宝島という事でその辺りも内包しているからなのでしょうけど、サブカル的コンパイルセンスってラストオージーの二人が決定付けたのだと思うのですけどね。
慎吾さんは…すいません、よく知りません。なんか売れない浅草芸人みたい…。まりもちゃんは戸川京子です。超、超可愛い。
ストーリーはすごく単純で、作られた人気者スターダストブラザーズが、メンタルの弱さからヘマをやって落ちぶれて、ドン底からまた再起を図るというだけの話。ロックミュージカルで、コメディで、SFもラブストーリーもなんでもござれのハチャメチャ(←80年代風を意識しました)な作品でございます。
もうね、クラクラしちゃうほどチープ!学祭かって感じ!プロデューサーの近田春夫のテイストの可能性もありますが、表現の極端なカリカチュアやシーンの変わるテンポ感には…やっぱり手塚の血を感じてしまいますね。
ヒットラーと瓜二つの総理が芸能プロをプロパガンダの為に使ってたり、総理の息子をスターにするっていう展開は非常に予見的に見えますが、まあ偶々でしょう。産まれた時から手塚漫画に塗れていれば、手癖的にポリティカルな表現が入ってしまうだけで、基本は楽しければ何でも良いのだと思います。
映画全体の、とっ散らかって悪く言えばまとまりのない感じの中にあって、集中力を持たせるというか、求心力になっているのは主人公2人のバディ感だと思います。なんかやたらと人懐っこくてキュートなんですよね。
…にしても、85年の邦画ってこんなにラフな作りが一般的だったのかな?と思い、86年の『ビリィ★ザ★キッドの新しい夜明け』をちょっと見返してみたら、…全然違うね。やっぱり今作が余りにもラフ!勿論そこが良いのです。
ロックミュージカルではあるのですが、そこは近田春夫プロデュースだけあって全体的にニューウェーブっぽいですね。作風には合っていると思います。“スターダストブラザーズのテーマ”はやたらと耳に残りますよ。
カメオ的に物凄い人数の著名人が出てきますが、枚挙に暇が無いし、今書いても皆さん知らない人ばっかりだろうな…。虚を突かれてビックリしちゃったのはスターダストブラザーズが前田日明と写真撮るシーンが有った事!当時は多分第一次UWFくらいだと思います。そんなにメジャーだったのかな?あと“いいとも”に出るシーンがあったんだけど、コレはホントに出たのかしら?
なんか表面的な事ばっかり書いてしまって申し訳ないです。どうしても今になってみるとそこが面白く見えてしまうので。1985、浮ついてんなぁ…。
まあ凡ゆる要素が強烈に好みの差が出てしまうので、強くオススメはし難いです。
…それより『ビリィ★ザ★キッドの新しい夜明け』を観ると良いのではないかしら?サブカルど真ん中って感じで興味深いですよ。大好きな一本です!
改めて言う事も無いですが、サブカルなんてとっくに死滅してしまってます。ヴィレヴァンとユニクロが殺した。
…こんな時勢だからこそ、星くず兄弟の再起に期待してしまうのだけど…。
※投稿前に改めて調べたら、今作の監督時まだ手塚眞監督二十代前半とかなのですね…。レビュー中の苦言めいた部分は全部無しにさせていただきます。スゲー。