ryosuke

楢山節考のryosukeのレビュー・感想・評価

楢山節考(1983年製作の映画)
4.1
苦しみが、死が、生活と一体だった時代の物語。壮絶なリアリズム描写が生々しい。方言交じりで若干聞き取りづらく、英語字幕付きの上映で助かった。
動物や昆虫のカットが印象的に挿入される。ウサギを隼がさらっていくカットはよく撮れたなという感じ。交尾や捕食の様子のカットが多く、人間たちもそれと同様に自然の一部として性と死が強調された形で描かれる。そのため本作では人間の命は軽い。塗れ場に蛇の交尾のカットを差し込んだり、あえて鳥にピントを合わせたりという演出が面白い。蛇は象徴的に用いられ、死を前にした一家の家からは出ていき、おりんが山中で鎮座してからは、同じようにとぐろを巻いて座り込む。フクロウが観察者として描かれ、フクロウ側からの視点のショットがあるのも印象的。
盗みをした一家が淡々と埋められるシーンの長回しも強烈。作業音のみが響く様が恐ろしい。
風と色調の変化、劇伴やコマ落としによって父親の霊を表現するシーンも映像的な見せ場。
姥捨て山でのシークエンスは壮絶。老人は山で喋ることができないという掟は絶妙で、切ない無言のコミュニケーションを生み出す。本当に姥捨ての風習があったのであれば、このような掟は子どもの心変わりを防ぐために有効だったのだろうかと想像する。
突然差し込まれる大量の遺骨のカット、死体から出てくるカラス、転がり落ちる老爺に飛び立つカラスの群れと迫力のある描写が連続する。
コマ落としで不気味な劇伴と共におりんの表情を捉えるカットはゾッとした。坂本スミ子はあくまで自分を死地に送らせようとする強い意志を持ったおりんを熱演していた。
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