さー

子猫をお願いのさーのレビュー・感想・評価

子猫をお願い(2001年製作の映画)
3.9
「他人であること」を前提として成り立つ「友達」という人間関係を、近すぎず遠すぎずの絶妙な距離感で描いた青春映画の佳作。物語は淡々と進んでいくけれど、登場人物たちの考え方や台詞は、自分自身の友達にまつわる思い出と共に心に響いてきた。鑑賞後自分語り不可避。青春の甘さや苦味のそばにあるのは、いつも友達の存在だ。

『友達』という人間関係ほど、『今この時』にフォーカスしたものもない。と思う。パートナーを選ぶときには、多かれ少なかれ『将来』が頭をかすめるけど、友達に対して「この人とならこの先もずっと仲良くやってけそうだな」とかあらかじめ考えて付き合い始めることあんまりないよね。だから、今この時が過ぎ去って、考え方が合わなくなったり、疎遠になったりするのも納得。逆もまた然り。

今作で描かれるのは、「今この時」を過ぎた後の友達だ。自分自身の人生が変化する中で、友達との関係だけが、楽しかったあの頃のままとどまることはあるのだろうか。

映画の最後で「the end」の代わりに現れる言葉。サッと清らかな風が吹き抜けるようなエンディングだった。
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