mimitakoyaki

子猫をお願いのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

子猫をお願い(2001年製作の映画)
4.0
ここんとこ、エゲツナイ(褒めてます)韓国映画ばっかり観てるので、たまには爽やかそうな感じの作品も観てみようと思い、内容を知らずにジャケットやタイトルの雰囲気だけで本作を選んでみたのですが、確かに二十歳の女の子の青春映画(しかもぺ・ドゥナ可愛い♡)ではありますが、非常にリアリティのある二十歳の描写で、キャピキャピした可愛らしさや楽しさ以上に彼女らそれぞれが抱える苦悩や閉塞感、痛みが繊細に描かれているので、想像していたよりもとても見応えがありました。

商業高校の同級生の仲良し五人組が、卒業後は別々の道を歩み、あんなに仲が良かったのに、距離ができ友情が微妙なものに変化していくんですね。

その根底には、厳しい現実を前に何者にもなれない焦りや諦め、見栄など様々な心模様があって、失業や深刻な貧困のせいで惨めな思いをし、夢なんて到底叶えられそうにないし、何の希望も持てない子や、高校卒業後も進学も就職もせず、親が営んでるサウナの手伝いをやってるものの、家族とも折り合いが悪く居場所がなくてこれからしたいことも見つからないモラトリアムな子や、ソウルで大手証券会社に就職し、可愛さから会社でもチヤホヤされて、高校時代の友達には上から目線で勝ち組を気取ってるけど、実はやってる事はお茶汲みやコピーばかりで、新しく可愛い子が入社すると見向きもされなくなって、惨めさや寂しさを覆い隠そうと友達に偉そうな態度をしたり…

それが、ソウルからちょっと離れたインチョンを舞台にしてるのも絶妙で、ソウルの洗練された都会の華やかさとは離れた寂れた地方感、出稼ぎ労働者が溢れる猥雑さなど、彼女らが抱える閉塞感がまんま街の雰囲気と合致してるんです。

彼女らが再会してバスでソウルまで遊びに出かけ、買い物をするのがオシャレな中心街ではなく庶民的な市場だったりするのも、なんだか等身大でリアリティがあっていいシーンだなと思いました。

行き詰まりを感じながらもどうしていいかわからなくて、何もできなくて、でも友達が本当に困ってる時に、本当の寄り添いや向き合いができ、そこから一歩踏み出そうとする微かな希望も良かったです。

120
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