けんぼー

座頭市のけんぼーのレビュー・感想・評価

座頭市(2003年製作の映画)
3.6
2021年鑑賞69本目。
アートではなくエンターテイメントに振り切った「北野武の座頭市」。

北野武版の座頭市。そういえば中学生の頃に初めて見てハマった作品でした。
物語自体はシンプルで、とにかく座頭市がさいきょーって話。
そのシンプルさも中学生の自分にはちょうど良かったのかもしれない。

物語を乱暴にまとめて過ぎてしまいましたが、北野武の得意とする「ヤクザ映画」としての一面もしっかりと盛り込まれており、裏社会の組織と正義のヒーローの戦いと、そこに絡み合ってくる他の登場人物たちの群像劇的な面も持ち合わせた作品です。

オープニングの潔さは素晴らしい。もうみんな「座頭市」ってどんな奴か大体知ってるよね?っていう前提で始まる。タイトルが開始数秒でどーーん、っと出るのも個人的にはシンプルで良かった。

北野監督の最初のシークエンスの作りは相変わらず鮮やかでお見事。座頭市が盲目で剣の達人であること、悪い奴を見極める嗅覚を持っていることが自然な流れで説明されます。

そしてその後の団子屋のシーンで群像劇の中心となる主要な登場人物たちについても紹介してしまう。テンポが良い。

まあ、その後のガダルカナル・タカを中心とする村人たちとのやりとりというか、ギャグ的な要素がちょっとくどい部分もありますが、それもまた北野監督らしさということで。

これまでの北野監督作品との違いは「アート」要素抑えめってところですかね。
「美しい画」を優先した感じはあまり見られませんでした。それよりもカッコ良さを本作は重視していて、座頭市(北野武)や用心棒(浅野忠信)の強さを表現する殺陣シーンに力を入れていた感じ。
ヤクザ映画だとどうしても銃撃戦になってしまい、あっさり終わることが多いんですが、本作は基本的に刀での斬り合いなので、バトルシーンも楽しむことができます。
それでも、実写版「るろうに剣心」以後の現代の視点から見ると最強キャラである座頭市の殺陣はちょっとシンプルすぎる感はありますが、北野監督もこの段階で結構な年齢だしね。でも迫力は十分にあり、「座頭市強えええ感」は表現できていると思います。

金髪や赤い杖などの見た目の派手さは賛否両論ありそうですが、あくまでもこれは「北野武の座頭市」なんだよと、あまりにも有名な「勝新太郎の座頭市」との差別化する意味では良かったのではないかと思いました。

また、劇中に取り入れられているタップダンスも、時代劇の中にまた違ったリズムを吹き込んでいて斬新でした。

最後の全員集合タップダンスもノリノリでザ・エンターテイメント!って感じで気持ちよく見終えることができました。

北野武監督は自由に自分の好きな作品を撮るというより、本作のようにある程度の「縛り」を設けた方が逆に輝くタイプなのではないかと思いました。

2021/6/3鑑賞