楳図かずおの傑作漫画「洗礼」（1976）の実写映画化。脚色と特殊造形を兼任した吉原健一監督については、他に「爆！ ＢＡＫＵ」(1992)を監督したこと以外は詳細不明。
ビジュアルはかなり良い。主演の今村理恵（当時17歳）は楳図漫画のイメージに近く、脇役に秋川リサ、田子千尋、郷達也とハーフタレントを揃えているところにも拘りが感じられる。脳移植手術マシンのデザインとギミックも禍々しくて上出来。
大筋は原作を辿っている。しかし本作に欠かせない“禁忌”のセンスが足りないのが残念。原作にエロティシズムが漂っていることは言うまでもないが、本作にあるのは単に男のエロ目線でありそれがノイズになっている。原作からキャラが改変されたピアノ教師も、最後に改心したとは到底思えずモヤついた幕切れになっているのが残念。
それでも、楳図漫画の映画化としては「蛇娘と白髪鬼」（1968）に次ぐマシな仕上がりになっているとは思う。
※ジョーン・クロフォードと娘を描いた「愛と憎しみの伝説」（1981）と類似点がある。楳図かずおの先駆性に驚くばかり。
