映画の道化師KEN

タクシードライバーの映画の道化師KENのネタバレレビュー・内容・結末

タクシードライバー(1976年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ナルシズムが狂気に変わる…

監督は「キング・オブ・コメディ」のマーティン・スコセッシ。主演は「ケープ・フィアー」のロバート・デ・ニーロ。加えて、「ホテル・ニューハンプシャー」のジョディ・フォスター、「ブロードキャスト・ニュース」のアルバート・ブルックス、「バグジー」のハーベイ・カイテルらが共演する!

ニューヨークの片隅で鬱屈した日々を送るベトナム帰還兵の青年トラビス。不眠症の彼は夜勤のタクシードライバーの仕事に就く。彼は夜の街を走りながら、麻薬や売春が横行する社会に嫌悪感を募らせていく。ある日、大統領候補パランタインの選挙事務所で働く美女ベッツィと親しくなったトラビスだったが初デートでポルノ映画に誘いベッツィを怒らせてしまう。密売人から銃を手に入れ、自らの肉体を鍛え始めたトラビスの胸中に、ある計画が湧き上がり…

1976年に公開され、ロバート・デ・ニーロを一気にスターの座に引き上げた名作。タクシードライバーの男が女にフラれるということが2度続き、どん詰まりになった結果、自身を認めさせるべく、過激な行動に走っていく過程を描く。

ベトナム帰還兵で重度の不眠症、余暇はポルノ映画館で過ごし、不平不満を日記に書き殴る主人公に最初は誰もが同情を持つが、段々と狂気に蝕まれ、暴走していく姿にドン引きさせられる。主人公トラヴィスが渇望するもの、それは同情では無く、承認だ。よく、大統領候補を暗殺しようとするトラヴィスの意図や売春宿を襲撃する理由が分からないと言われるがそれはトラヴィスを認めない女性たちに自身の凄さを知らしめ、認めさせようとする、強引な自己肯定なのだ。女性たちが慕い、権力を感じる男と対決する。つまり、自身の有能さを証明出来れば、誰を殺しても良かったということだ(大統領候補のパランタイン暗殺に失敗したため、標的をポン引きのスポーツに変更した理由がそれ)。トラヴィスの抱える苦悩と闇は人ごとではない。社会に適応出来ない人々のフラストレーションが爆発した時、誰かの脅威になりえるという警鐘は現実に通ずるものがある。承認欲求と狂気が紙一重であることを知ってしまった時、人が怖いと思ってしまうのは私だけだろうか…

余談だが、デ・ニーロがトラヴィスを演じるにあたり、実際にタクシードライバーの仕事をして、リアルな運転手を再現したそうだ。