久々に観たらやはり映画として完璧だった。
この"完璧"が、きっちり作り込まれたと感じさせないところが、すごく良い。以前はそれをバーナード・ハーマンの音楽が醸し出す雰囲気によるものだと思っていた。でも、映画を成り立たせる全ての要素の相乗効果だと分かった。
特にカメラワークによる演出に唸らされた。構図は非の打ちどころがなく、固定された画が一つもなく、常に人物に寄り添って動いてる。あまりにも自然で、時が流れるように進むので、緻密な構成をシークエンスだと感じないほど。
そして私が好きなのは、この映画が一貫して、トラヴィスがあの行動に至った理由や目的ではなく、プロセスを描いていること。改めて、ベッツィーやアイリスは勿論、妻が不倫している乗客、先輩ドライバーへの吐露、食料品店の強盗などのエピソードが、重要な通過点だと実感。だからデ・ニーロ のYou talkin' to me? を、より一層深刻に受け止めることができる。
ラストの不穏なショット。若い頃は思わせぶりな気がして、絶対に必要とまでは断言できなかったが、今回は最後の瞬間まで完璧だと思った。
※ 撮影監督: マイケル・チャップマン