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タクシードライバーのLEAKCINEMAのレビュー・感想・評価

タクシードライバー(1976年製作の映画)
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スコセッシ×デ・ニーロ、触れるなキケンのタッグ第二作目。(カイテルとは四作目)

劇場で観たのは今回がお初。しかも古の映画ファンには嬉しいフィルム上映である。やってくれるぜ目黒シネマ。

最後に観たのは確か中学生の頃。自宅でCDサイズの古ぼけたDVDで鑑賞した。まだ義務教育者なので、内容や作品の背景はよく考えずに観たが、中学生ながらスコセッシが織りなす斬新なカメラワークと、デ・ニーロから発せられる危険な香りにまんまとノックアウトしてしまったのを未だに覚えている。

それから約十年。満を持しての劇場鑑賞である。

やはりすごい。他の七十年代当時の映画にはない殺気だった雰囲気にまたやられてしまった。本作は戦争映画であり、恋愛映画でもあり、ヒーロー映画でもある。ヴェトナムの戦地に立った国の被害者が、アブナイ輩たちが出歩く夜の街に還り、そこで同じく国の被害者である少女の救世主となるまでの過程を描く。(でも本作の一番アブナイ輩は、トラヴィスのタクシーに乗り込んだ髭面のスコセッシ本人ではあるまいか?)

でもあの選挙事務所で知り合った清楚で別嬪さんのベッツィーを、何故初デートでポルノ映画館に連れて行ったのか・・・・おそらく戦場で身につけた精神的ショックと、深刻な不眠症の所為であろう。社会性と人間性を完全に失ってしまったのだ。やはり彼は被害者そのものである。

トラヴィスの役はデ・ニーロ以外考えられない。あの不安定で落ち着きのないヴェトナム帰還兵の若きタクシー・ドライヴァーを見事に演じ切っている。(演じ切ってしまっている)彼の芝居は観ている我々に得体の知れない恐怖心を抱かせる。それは異常なほどの「リアリティー」である。その原因は、撮影に際して数週間、実際にタクシーの運ちゃんを務めた影響であろう。常に「役者バカ」のデ・ニーロには為す術なし。

そんなトラヴィスの人生を変えた美少女を演じるのは、まだ当時十三歳のジョディ・フォスター。(貫禄が凄まじい)そして最終的なトラヴィスの敵となるヒモのカイテル。(長髪がミスマッチ)こうして見ると全員が全員初々しく見えてしまうが、その初々しさがまたたまらない。全員のエネルギーが迸っている。まるでドキュメンタリー映画を観ているような気分になってくるのだ。異常なほどの「リアリティー」。

常に画面上に反響する怪しいサックスの吐息と荒れた夜のNY、そしてトラヴィスの鋭い眼光と黄色いキャブ・・・・アメリカン映画の代表作である。

さぁ、鏡で身嗜みを整えながらこう言ってみよう。
「You talkin’ to me?」
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