デイジーベル

タクシードライバーのデイジーベルのレビュー・感想・評価

タクシードライバー(1976年製作の映画)
4.2
「アメリカンニューシネマの終わりを告げる作品」

大都市でタクシードライバーをやっているが″孤独″に苛まれている男トラヴィス。何をやっても上手くいかない、何か大きい事を始めないといけないのに、それが何かはわからない。やがて″孤独″な男は″疎外感″と″恐怖心″から狂気を帯びた行動へと走り出す…

ラストは自暴自棄とも言える、自身の正義の正当化 、望まれてもいない救世主(ヒーロー)になるトラヴィス。その余りにバイオレンスな描写は、少女にトラウマを植え付けた事は確実だろう。
(しかし、このトラヴィスがカッコ良く見えるのも矛盾した事実だ)

しかし、この作品はここで終わらない。その後マスコミによって彼は″ヒーロー″となり、平穏な日常生活を手に入れる。仲間との交流や、失恋相手との交流(お金を貰わないシーンにはとにかく痺れる)が描かれている。そして最後は、彼女を置き去り、タクシーを夜の街へ走らせる。

ラストシーンもぼかされており、人によって捉え方や感じ方が変わる所も、この作品の″深さ″とゆうか、傑作にした要因だと思う。

この作品は国家や社会、それらが生み出す″孤独″に対して警鐘を鳴らしているのかもしれない。



「ドライヴ」を観て思い出したように再鑑賞。
″孤独″やドライバー、バイオレンスという点に於いては「ドライヴ」と同じだが、トラヴィスは決して″ヒーロー″では無い。(結果としてヒーロー的扱いを受けたが)改めて似て非なる作品なんだと感じた。



[雑記]初デートでポルノ映画を観に行くとか、本当にコミュニケーション能力が欠落してるトラヴィス、その事実にすら気づいてない模様。観ているこっちが苦しくなる。
個人的には″鏡″に向かい「俺に言っているのか?」と言い銃を向けるシーンは、狂気がピークに達してるのが痛いほど伝わってくる、大好きなシーンのひとつ。
″鏡″は女だけのものじゃない![男×鏡]は素晴らしい!