Miver2

タクシードライバーのMiver2のレビュー・感想・評価

タクシードライバー(1976年製作の映画)
4.9
最初の運転席の窓が水に覆われた後に広がるニューヨークの夜の灯りがとても美しかったな。
今回は35mmフィルム上映だった事もあり、フィルムだからこそ出る色合いがそこにはあったと思うし、ニューヨークの街並みと物語の鼓動が共鳴し合っていたように思う。

主人公が自分の正当性を追い求めながら、その孤独を埋めようとする姿はボタンを掛け違えてしまう痛々しさがヒリヒリと伝わって来る物があったように思う。
そしてその孤独を種をして、自らを鍛え抜いて行く姿とその光景にどんどん引き込まれて行く。

何よりもロバート・デ・ニーロの演技がとにかく圧巻の凄まじさを放っていて。
感情移入出来ないし、その立ち振る舞いは何処か不気味だったり怖くもあったけど、その存在感は文句無しの素晴らしさだった。

物語を観ていて、ニューヨークの街並みは美しくてこの街の息吹も感じたりもするけど、この物語に登場する人達の心は何処か寒々としていたり、荒れ果てているようにも感じたりしたのもまた印象的だったな。

そしてデニーロ演じるトラヴィスが、何処か寒々とした心像風景やその孤独に向き合ってもたらす変化の描き具合は、釘付けにならずにはいられない物があった。

物語のクライマックスの場面で、デニーロが頭に人差し指を突き付けるその瞬間に凄まじい狂気が溢れ出していたし、この瞬間をスクリーンで観て感じられる幸せを思わず噛み締めた。

ニューヨークの街の鼓動やその時代背景、美しさと残酷さを背中合わせにしながら、その街で孤独を背負いながら自らを鍛え上げて生き抜いて行こうとするその姿がとにかく圧巻の映画。

デニーロの演技の凄まじさ、音楽の使い方や、映像の美しさも最高で、全てがとにかく素晴らしい作品でした。
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