ガラムマサラ

タクシードライバーのガラムマサラのレビュー・感想・評価

タクシードライバー(1976年製作の映画)
3.7

世間が『JOKER』で染まっていますが、そのオマージュ元となったこちらの作品も是非観てもらいたいです。



アメリカン・ニューシネマの最後の傑作とも言われている本作。
『JOKER』では捻じ曲がった狂気の発露の先が世間的に悪と捉えられる行いだったのに対して、本作ではまた違った狂気の解放の仕方を描いています。

ベトナム帰還兵である主人公トラヴィスが求めていたものは自分がいる証。
機械的に働くだけでは彼は替えの利く歯車でしかなく、周りは誰も彼に注目しない。

空虚に過ぎていく毎日を変えるには行動しかないと動き始めるトラヴィスの成すことは傍から見れば異様です。

恋人を作ろうとしても人助けをしても見えているのは自分の姿のみ。エゴのようなもので、結局自分が周りに認知されたいだけなんだろうなとしか思えないんです。

しかしそこに共感を抱くのも事実。
承認欲求ってやつですね。
私だって誰かに認められたいって気持ちはありますからねぇ…。

トラヴィスのそれは自身の抱える鬱憤によって暴力的な方向に進んでしまい、結果的にそれは良かったのかもしれませんが、賛否は分かれるでしょう。

ただ退廃的で社会風刺の効いた世界観と主人公の独善的な生き様は「こうなるかもしれない」と思わせると同時に「こういう生き方もアリだな」と思わずにはいられない魅力があるんですよねぇ。