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タクシードライバーのnaoズfirmのレビュー・感想・評価

タクシードライバー(1976年製作の映画)
3.7

正気と狂気の葛藤🎬

ストーリーはニューヨークに生きる孤独な青年が狂気じみた犯罪へと駆られてゆく姿を描いた作品でした。主演のロバート・デ・ニーロは彼は役作りの為、運転手のライセンスも取得し、実際に3週間マンハッタンでタクシードライバーとして働いたそうです。そして車を運転してみると、大半の乗客は運転手にはまるで無関心であることに気づき、主人公トラヴィスの気持ちを実感できたと言います。また娼婦のポンビキ、スポーツ役のハーベイ・カイテルも実際にポンビキをやっていた男のアドバイスを受けてリアルな役作りに挑んだという役者の役作りへの情熱を感じた作品です。そして今作は社会背景を知らないと凄さがわからない作品となっています。"ベトナム戦争帰りの兵隊" "当時のニューヨークの治安の悪さ"この二つがキーワードとなっています。彼はベトナム戦争帰りの元海兵隊員であり、重度の不眠症、余暇はポルノ映画鑑賞、不満と愚痴を書き殴る日記、鬱屈とした日々に付きまとう逃げ場のない寂しさに胸が締め付けられていました。しかし、ストーリーが進むにつれ、そんな同情はいとも簡単に突き返されてしまいました。トラヴィスが欲しているのは“同情”ではなく“承認”です。タクシー運転手という職において、彼自身の存在価値を求める者はいません。ただ客が求めているものは、目的地へと運んでくれるということだけです。同僚たちとの距離も縮まらず、愛を捧げた女性には無知と矛盾を見抜かれ、彼を必要とする者は誰もいません。だからこそ、鏡像に対する名セリフ「You talkin' to me?」が印象的でした。そして40年以上の時を経て「ジョーカー」へと受け継がれたオマージュ、ロバート・デ・ニーロがキャストとして両作を繋ぎ、それぞれが狂気へのプロセスを重視している点も見逃せません。
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