singer

タクシードライバーのsingerのレビュー・感想・評価

タクシードライバー(1976年製作の映画)
-
自分にとっては、新しい感性の扉を開けたような感触がしっかりと残ったという、そんな転機となった作品だったと思います。
それまでは、映画作品というものは、”観て楽しむ”という、それだけのもののように思っていたんですが、この作品を観た後、何とも表現できない衝撃が心に残って、”楽しくはないけど、凄く忘れ難い”というような気持ちにさせられたのを、今でもよく覚えています。
それは、18歳の春だったかなぁ。

以降、映画の趣味がちょっとずつ変わって行きましたね。
それまでは、ハリウッドの大衆的な娯楽大作を割と好んで観てたけど、明らかに肌で感じるような芸術性の高い作品なんかを好むようになってきたし、後はやっぱりマーティン・スコセッシにドップリと嵌ってたんだよなぁ。

ということで、自分が2007年の10月30日にブログに投稿したマーティン・スコセッシの記事が、ちょっと今では”本当に自分が書いたのかなぁ”と思うくらいの内容の濃さだったので、一部をここに載せておきます。
ちょうど13年前の自分は、こんな渾身の記事を書いてたんだなぁ。
——————————————————
🎬スコセッシについて

マーティン・スコセッシ。
今敢えて若い人たちに注目してもらいたい監督である。
なぜなら彼のフィルムには深くて熱いロック・スピリットが息吹いているからだ。
デビュー作の「ウッドストック」。78年の「ラスト・ワルツ」。
近年では2005年にボブ・ディランのドキュメント「ノー・ディレクション・ホーム」を手掛けるなど、
ロックとの直接的な関わりが深い作品郡は、スコセッシを語る上では欠かせない要素だろう。

そして、ロックが最も多感で、色彩を重ねていった70年代に、その息吹をフィルムに焼き付けた彼は数々の名作を誕生させている。
今も尚、アート・ムーヴィーの門戸を開くきっかけとして幅広い世代に支持されている歴史的名作、「タクシードライバー」をはじめ、
「ミーン・ストリート」、「ニューヨーク・ニューヨーク」と数々の傑作が70年代の作品であることが、それを裏付けている。

今でこそ巨匠と呼ばれる名監督まで上り詰めた彼だが、その作品郡には常にインディペンデントな精神が内包されていて、
ゾクゾクするような危うさに、ドッシリとした重厚感。過激なバイオレンス。
内なる狂気や、激しい心の葛藤が描かれており、それがたとえ異質であっても、「短絡的な逃げ」を美学としない徹底した表現が特徴的だ。
「タクシードライバー」のトラヴィスをはじめ、「レイジング・ブル」のジェイク・ラモッタ、「ギャング・オブ・ニューヨーク」のブッチャー、
「ケープ・フィアー」のケイディ、「キング・オブ・コメディ」のルパート・パプキン。
常人の理解を超えたスコセッシの分身たちは、変容しつつも強烈な「生」のエネルギーを作品に残す。
それは観る者に特別な感情の揺れを引き起こすのである。
その揺らぎはカウンター・カルチャーを原動力とするロックに酷似していると言えよう。

さらに俳優の演技力を引き出す手腕にも優れている。
ロバート・デ・ニーロ、ハーヴェイ・カイテル、ポール・ニューマン、ジョー・ペシ、ダニエル・デイ・ルイス、レオナルド・ディカプリオ、シャロン・ストーンなど、
彼のフィルムをきっかけに大きな成功を手にした俳優たちの中には、互いの理想を磨き続けるファミリーとしてその後も熱い親交を持つ者も多い。

「タクシードライバー」
この作品を前にして深い分析は必要無いだろう。
多くの映画好きがマイベストの棚に、この作品を忍ばせているのには理由がある。
それは、この作品は「ただ観て楽しむ」だけの映画ではなく、「感じる」という要素の強い映画だからだ。
そして、多くの若者たちはそれを感じることで、映画の世界の奥深くに足を踏み入れることになるのである。
賞賛もあれば、嫌悪もあると思われるが、映画を語る上で一度は鑑賞しておきたい作品だ。

——————————————————
http://kj1107.seesaa.net/article/63353658.html
↑こちらが当時のブログ記事の全文です。
singer

singer