えいがドゥロヴァウ

サイレント・ランニングのえいがドゥロヴァウのレビュー・感想・評価

サイレント・ランニング(1972年製作の映画)
3.8
うわぁあー独特
何から手をつけようかしら
長くなっちゃう

特定の時代性がとてもとても色濃く顕在しているSF映画という印象
ヒッピー文化
と言っても分かりやすいラブ&ピースやサイケデリック柄が登場するわけではなく
当時のアメリカ人に深く根ざした精神性を垣間見たような気分
合理化・文明化の名のもとに自然が破壊された未来を皮肉的に描いていて、その眼差しはすこぶる冷やかで諦観めいている

劇中歌を歌うジョーン・バエズなる女性は60年代のフォークシンガーだそうで、ベトナム戦争の折で反戦の曲も歌っていたという
自然を愛でる歌詞と素朴な曲調ながら怪音波のような強烈なビブラートが脳みそをグラグラと揺らす
長時間聴くとおかしくなりそうで怖くなった…
監督が意図した効果だとは思わないけれど

植物が死滅した近未来の地球
主人公は「地球再緑化計画」に従事し、自身も地球に緑が戻ることを願いながら、宇宙船で動植物を飼育し8年に及ぶ研究を続けてきた
しかし3人の同僚たちはてんで無関心で
計画が頓挫して地球に還ることを待ち望んでいる
というのも、地球では人類は気候が常に一定に管理されたドームの中で、病気をすることもなく安定した生活を手に入れていたのだ
快適な生活をするうえでは植物などまったく必要はなく
自然への愛を説く主人公は変人扱いされる(この構図はすごく良かった)
やがて同僚の期待どおり計画は中止になり
植物園を爆破する命令が下るが
主人公は抵抗して同僚たちを殺してしまう
そしてドローン(ロボット)たちとともに栽培を続けながら
当て所なく宇宙を漂流する

サイレント・ランニングとは潜水艦戦術のひとつで、ソナー探知を避けるため艦内機器類を停止し、無音潜行すること(wiki情報)
主人公は命令に背いたため他の宇宙船からの干渉を断ち、サイレント・ランニングを行なう

ドローンたちはヨタヨタ歩きや人間くさい仕草がとても愛くるしいのだけれど
人の腰くらいまでの小さな機体に入って役を演じていたのは
ベトナム戦争で負傷してその中に入れるサイズになった人だったとのことで
ここでもゾワゾワとさせられる…

低予算だった関係もあってか
基本は主人公とドローンたちのやりとりばかりで淡々としていて静かな映画だから
尚更むっちゃ怖い…
えげつない反戦と文明批判
怨念めいたものすら感じてしまうのは僕だけ?
他のレビューを書かれた方々と全然捉え方が違うけど
僕の頭がイッちゃってるのだとしたら
それはきっと例の怪音波のせいです

宇宙船から切り離された植物園が宇宙を漂いながら遠ざかる姿は
人間が自らの手で切り捨て、取り戻せなくなる自然へのレクイエムか…
厳かだ…
ラストの展開も…
すごくヘコんだ…
巷の胸糞と呼ばれる映画より断然ズッシリと来ましたです
力のある映画ですよこれは
もー怖くて二度と観たくありません
(…とか言ってる映画はどうせいつかまた観るのでしょう)