ルサチマ

新しい人生のルサチマのレビュー・感想・評価

新しい人生(1966年製作の映画)
4.7
外のロケーションと室内のカット割の質感が全く違うことに驚く。ドキュメントタッチで緩やかな画面構図で捉える屋外シーンに対し、室内での場面は狭い空間を広角で細かくカットを割ることで、絶え間のない空間の分断と接続を感じさせてくれる。

空間の分断と断絶という店で最も顕著であるのは映画終盤で病でベッドに横たわる母を家族が見守る場面でのカット割だ。

やや俯瞰でベッドの周りの人々を含めその場の全員を捉えたロングショットから、母と画面下手のベッド脇にいる男の寄りのツーショット、そしてその男の脇にいる女を含めたスリーショットというように古典的デクパージュで画面下手側をまずは提示する。
その後、ベッドの上手側に座る男側から捉えた母親とのツーショット、その逆の母側から捉えた画面上手側の男とのツーショットの切り返し→カメラがパンして画面下手側の男とのツーショット、俯瞰で空間全体を捉えたロングショット(ただしこの場面最初のベッドに対して正面に置かれた俯瞰構図ではなく、ベッドに対して斜め上手側から捉えた俯瞰構図)でベッドの手前に座る男の姿が提示される・・・というように全てはベッドに横たわる母を中心とした空間の分断と接続が実践されていることがわかる。

備忘録としてその他の室内空間の印象的なカット割を明記するならば、男兄弟二人のやりとりがなされる倉庫でのカット割と金を持ち逃げしようとする女を追いつめた先で身の上話をすることになる枯れた井戸のカット割が素晴らしい。

前者はまず広角のロングで縦構図に配置された兄弟の様子を捉える、次にカメラは画面手前の男を体の右側からバストショットで捉え、今度は画面奥の男を体のやや左側からバストショットで見せる(一応ラインは一致している)と、カメラは突如二人の男を背中側(最初のカットで画面手前に立つ男の左側)からロングショットで提示したかと思えば、最終的にカメラは2人から遠く離れた俯瞰の構図で建物の屋根を支える梁越しに男たちをフレームに収めていた。

後者はまず井戸に立つ男女を目高のフルショットで見せる→女のバストショット→井戸に横たわる男女を正面の俯瞰から捉えたミドルショット→女側から見た男のクロースアップ→カメラに対して正面を向く女のクロースアップ→先述した同場面での2人のミドルショット。

倉庫での俯瞰ショットは過剰な印象があるものの、上記のシーケンスではカットが切り替わるたびに新鮮な驚きと発見が感じられる見事なデクパージュが実践されていた。

また『青い年』に続いて『新しい人生』における土地の歩みとしては、より安定しない地面に対し、男たちは船に乗って海へと乗り出そうとしているように見える。先述した枯れた井戸のシーンのセリフでは「海は誰のものでもない」と語られていたが、船に乗る男たちの姿は、誰のものでもないはずの海を我が物としようとするかのような精神の象徴として見ていいのかどうか。これについては今回の特集で上映されなかったパウロ・ローシャ作品をしっかりと確認したうえで検討したい。
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