一人旅

リリオムの一人旅のレビュー・感想・評価

リリオム(1934年製作の映画)
5.0
フリッツ・ラング監督作。

ハンガリー出身の劇作家モルナール・フェレンツによる1909年発表の同名戯曲をオーストリア出身の巨匠フリッツ・ラングがフランスで映画化したもので、ならず者の男と純情な娘の愛のゆくえを見つめます。

遊園地の回転木馬の呼び込み係をしているならず者の青年リリオムは、お客の女性ジュリーと出逢い結婚するが、仕事をクビになったことで経済的に困窮したリリオムは、仲間と共に工場の給与6万フランを強奪しようとするも失敗して命を失う…という“恋愛+人間ドラマ”の隠れた名篇で、粗暴な男と純真な娘の愛を現実と幻想の中に映し出していきます。

身重の妻を傷つけたままこの世を去った男が二人の天使に導かれて辿り着いた奇妙な天国世界で生前の行動を見つめ直し、一晩だけ地上に戻ることを許されるというファンタジックな展開とユニークな映像世界が出色のヒューマンドラマで、地上と天国を行き交う男の姿を通じて“人としての在り方”そして“愛の尊さ”を儚くも美しく浮かび上がらせた名篇ドラマとなっています。
一人旅

一人旅