こたつむり

探偵物語のこたつむりのレビュー・感想・評価

探偵物語(1951年製作の映画)
3.9
★ 悪・即・斬!

「なんじゃ、こりゃあッ」
の松田優作さんが主演のドラマ…ではなく。
『ローマの休日』を仕上げたウィリアム・ワイラー監督の舞台劇。なかなか見応えのある作品でした。

何しろ、見事なまでの語り口。
ほぼ警察署の中で繰り広げられる物語なのに、それを感じさせない拡がりがあるのです。これは、主人公から警察署の外に立つタクシーの運転手に至るまで、登場人物たちが瑞々しく立ち振る舞っているから。躍動感が違うのです。

また、物語に着目すれば。
主人公を演じたカーク・ダグラスの独壇場。
彼は《厳しい目線で悪を許さない刑事》なのですが、頑固なまでに信念を貫く姿は硬質感たっぷり。しかも、複数の事件を一人で処理する多忙極まりない背中は煤けていて、なんとも言えない渋みがあるのです。

だから、物語終盤の展開は胸を鷲掴み。
信念と妄念の狭間で感情をコントロールできずに呻く様は、痛くて痛くて堪らなく。思わず「なんじゃ、こりゃあッ」と叫びたくなるのも当然。鳩尾がヒリヒリとシビれるのです。

やはり、人生とは点ではなく線。
これまで歩んできた軌跡が重要なのでしょう。
だから、幼少期に見た親の背中は誰もが逆らえない軛。彼を本当に理解できるのは、神の視点を持つ“観客”だけなのかもしれません。

まあ、そんなわけで。
正義とは何か、悪とは何か。
そして、人を愛するということは何か…と問い掛けてくる作品。『ローマの休日』を仕上げる2年前に、こんな傑作を作り上げるなんて…監督さんの辣腕ぶりには二の句が継げませんな。

ちなみに邦題の『探偵物語』は確実に誤訳。
正確を期するならば『刑事物語』とするべきでした(そうなると松田優作さんではなく、武田鉄矢さんを連想しますけど)。配給会社の人たちは誰もツッコまなかったのでしょうか…?