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ロシュフォールの恋人たちのkomoのレビュー・感想・評価

ロシュフォールの恋人たち(1966年製作の映画)
4.4
年に一度の大祭を控えたフランスの港町・ロシュフォールに、大勢の旅芸人が到着していた。
街に住む美しい姉妹・ソランジュ(フランソワーズ・ドルレアック)とデルフィーヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、花の都パリで自らの芸術を開花させること、そして運命の恋人と出会うことを夢みている。
旅芸人たちとの出会いを経て、姉妹たちの運命は変わってゆく。


【複数形になれる幸福】

ずっと観ようと思いながら先延ばしになってしまっていた名作にようやく触れることができました。
そして冒頭の楽曲『キャラバンの到着』が流れ始めた瞬間に、もっと早く観ていれば良かった…!となりました。笑
ミシェル・ルグランの曲がとにかく素晴らしく、どの曲も心地よく胸を叩いてくれました。
表題曲であり全体を流れるテーマでもある『キャラバンの到着』は、日本でも車のCMでお馴染みですが、旅芸人が陽気に踊る背景を持った曲だとは知りませんでした。転調が激しく、パリの美しい街並みを表現した小節もあり、まさに変幻自在な心踊る楽曲です。

映像もまた清々しく、登場するものひとつひとつを可愛らしいオブジェとして部屋に飾りたくなるほどの華やかさに満ちています。
ジーン・ケリーに似た人がいると思ったらまさかのご本人だった!

カトリーヌ・ドヌーヴを始めとする映像の美しさを堪能するだけでも価値のある映画ですが、物語の本筋にももちろん魅力がありました。

運命の恋人に出逢いたいと思いながらも、自身の夢に強い意志を持ち、少し意地っ張りだったりもする美しい姉妹。
恋を求めた人の夢が結末で叶うのは、決して予定調和ではなく、登場人物たちの幸せをメッセージとして打ち出した結果だと思いました。

ロシュフォールの『恋人たち』、それは見つめ合う2人を示す言葉でもあり、ロシュフォールに集い生き生きと踊る人々を示す言葉でもあると思います。恋人がいなかったとしても、この街で夢を追う人はきっと、この街にとっての『恋人たち』です。

人間の幸福をとことん俯瞰で見た、幸せの哲学のような映画です。
ここに登場する複数形の人たちのように、私もなりたい。
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