半兵衛

女の香りの半兵衛のレビュー・感想・評価

女の香り(1968年製作の映画)
3.8
『サンセット大通り』のような内幕ものを目指しているはずが、大映ドラマのような過剰な登場人物、さじ加減を間違えているとしか思えない過剰な演出、驚愕のオチによって違うベクトルの映画に仕上がってしまった。それに味わいは濃厚なんだけれど、まとまりがおかしいので傑作になり損ねた感じ。

亡くなった女優のそっくりさんである主人公・エルサ(キム・ノヴァク)を使って女優の自伝映画を作るのはわかるけれど、女優の夫であった監督のいびつな妻への愛(主人公にも妻への愛を一方的に押し付ける)、そして監督の愛人でマネージャー的存在のロッセーラの主人公への歪んだ愛が重すぎて見ているこっちが壊れそう。そして主人公に突如死んだ女優のライラが憑依するかのような展開、どう見ても死んだ女優の魂が憑いているとしか思えないのに映画の登場人物たちは女優の演技力の賜物と言っているのがクレイジー。『悪徳』のロッド・スタイガーといい、『甘い抱擁』といいアルドリッチは業界の人間は狂っていると思っているんだろうな。

暴君プロデューサーとして君臨するアーネスト・ボーグナインの人間性の欠片もない圧倒的過剰さの素晴らしさは、『北国の帝王』のシャッコの片鱗を覗かせる。
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