カタパルトスープレックス

淑女は何を忘れたかのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

淑女は何を忘れたか(1937年製作の映画)
2.9
小津安二郎監督のコメディータッチの家族ドラマです。戦前の小津安二郎と戦後の小津安二郎が混じった感じ。とても興味深い作品ではあるのですが、内容的には平凡だったりもする。

戦前の小津安二郎監督はどちらかというとモダンで西洋趣味でした。本作でも(久しぶりに)そんな戦前の「小津好み」が現れています。英語がちょいちょい出てくるし、登場人物も英字新聞とか読んでたりもする。本作が公開された年は日中戦争が始まった年で、ここからどんどん日本は戦争にハマっていくことになるのですが、そう言う意味でも本作での西洋趣味はとても興味深い。

その戦前の「小津好み」を代表するような登場人物が主人公の教授(斎藤達雄)であり、その姪の節子(桑野通子)です。斎藤達雄は戦前の小津安二郎作品の常連でしたが、本作では久しぶりの登場となります。桑野通子は清水宏監督『有りがたうさん』(1936年)でもそうでしたが、とてもモダンな感じの雰囲気美人です。やはり戦前の小津安二郎作品にモダンガールな役でよく出ていた伊達里子を可愛らしくした感じ。

一方で戦後の「小津好み」を代表するような登場人物が教授の妻(栗島すみ子)です。いかにも上流階級でいい着物を着ている感じ。

厚田雄春が撮影監督となるのがこの作品の後半から。そのためか、前半と後半では少しタッチが違う気がする。しかし、それでも観劇でタバコを吸ったりしてカッコよかったりもする。

色々と興味深い部分は多いのですが、物語としてはそれほど心に残るものはない。