Shaw

天国の日々のShawのレビュー・感想・評価

天国の日々(1978年製作の映画)
4.5
05.11.2022
05.01.2023

映像だけでなく、編集、語り、あらゆる面で70年代アメリカ史において一線を画す傑作。

よくよく考えるとなかなか陳腐で醜悪な三角関係が、子供の眼差しと当時の社会背景、抜群の映像力とのブレンドでうまく調理してある。

なんども見るうちに記憶と人生の積み重なりでどんどん感情的価値が上がっていく系作品かと思われる。

他のユーザーの感想・評価

2023年5月…
レンタルして見ました。
前々から見たかった作品です。
映像美は流石に美しく
リチャード・ギア若い・・
しうち

しうちの感想・評価

4.5
マジックアワーを効果的に使った圧倒的映像美。脚本が薄いのも逆に良い
kty

ktyの感想・評価

4.0
ミレーやゴッホを彷彿とさせる農場の風景と、リチャード・ギア、ブルック・アダムス、サム・シェパードらが織り成す感情表現豊かな共演。

アメリカン・ニューシネマの名残りを思わせる余韻が味わい深い。😊
イータ

イータの感想・評価

3.3
「天国の日々」
匂いまでこちらに伝わってくるような映像
ストーリーとは少し離れた妹の視点で語られていくナレーションが良い
壮麗な自然、それとは裏腹の人間模様
70年代とは思えない映像美
自然の美しさと人間を画く
『天国の日々』(Days of Heaven)1978アメリカ

とても美しい映像で描かれた三角関係。実はアーサー王物語がベース?

1916年。シカゴの鉄工所を飛び出したビル(リチャード・ギア)は付き合っているアビー(ブルック・アダムズ)、そしてビルの妹リンダと共にテキサスの麦畑に収穫の期間労働に就く。ビルは「色々面倒がないから」という理由でアビーは妹だということにしている。

雇い主の農場主チャック(サム・シェパード・かっこいい!)が余命一年と診断されている事をたまたま知ったビルはアビーにチャックと付き合うようにそれとなく勧める。アビーに一目惚れしていたチャックとアビーは結婚するが、、、

IMDBによるとこの映画のストーリーの源泉は2つあるらしい。

一つはアレクサンドル・デュマの『三銃士』のミレディが英国伯爵をたらし込んで結婚する話。

もう一つはヘンリー・ジェイムズの『天使の翼』。貧しい新聞記者と交際している女性が金持ちに取り入るために彼氏を差し出す話。

『天国の日々』ではこの金持ちに取り入って結婚するという部分が意図的ではないような描かれ方だ。アビーはビルが自分を女性として求めてこないことがやや物足りない。

アビーが人妻になってビルの思いは強くなった感じ。ビルはチャックとアビーの寝室に忍び込みアビーを川に連れ出す。浅い川の流れの中にたちグラスでワインを飲む二人。ビルはグラスを落として見失ってしまう。川底に沈むワイングラスがまるで聖杯のようだ。

あっ!これは『アーサー王物語』のアーサーの妻グゥエネビアとランスロットの不倫も元になってるかもと思った。

『三銃士』『天使の翼』と違って二人の中をチャックから疑われたビルは農場から離れる。ここはピカレスクというより三角関係の恋愛物語になっている。

そしてイナゴが襲来して麦畑が襲われて物語はクライマックスを迎える。燃え盛る畑に地獄の使者の様に現れる蒸気トラクターの姿が恐ろしい。

エピローグは蛇足に思えた。字幕でその後の運命を説明しても良かったかもしれない。

撮影に一年、編集に2年かけてもまとまらず最後にはリンダがナレーションで話を説明する形にして公開したが興行成績は振るわなかった。監督テレンス・マリックが再び映画を撮ったのは20年後だった。

ピカレスクにも恋愛物語にもなりきれず曖昧さが残った作品でした。

撮影監督ネストール・アルメンドロスがアカデミー賞を取った自然光の撮影が素晴らしい。(アルメンドロスがトリュフォー作品のために抜けた為半分はハスケル・ウェクスラーが担当したけど)
1970年代の作品にして他作品を圧倒する映像美!CGなどではなく、そこにある自然の素材の美しさをなんとも言えぬ純度の高さで映し出す。1つ1つのシーンが1枚の絵画になりそうな美しい画の連続で、アカデミー賞撮影賞受賞も大納得。

作品全体を通して言葉で多くを語らず、その徹底的な画作りによる映像で語るような作品で、今まであまり味わったことのないような独特な感覚を鑑賞中から感じる作品だった。

物語の設定は、貧乏で放浪していたカップル(と男の妹)が、季節労働者として働き始めた麦畑で働き始め、その畑のオーナーで余命宣告されている大金持ちの若者の財産を狙い、そのオーナーとカップルの女性を結婚させるというもので、その先に待ち受けるそれぞれの運命を描く。

設定も展開も、正直なところ、他作品で観たような作品なのだが、兎にも角にも冒頭で書いた圧倒的な映像美とそれが生み出す独特な空気感により、作品全体が異様に魅力的。広大な麦畑、広大な青空、夕焼け。美しい大自然を背景に映る農夫たちの影すら、そのコントラストがなんとも美しい。そして、その天国のような美しさがあるからこそ、時として地獄のように映る天災の映像もまた悍ましくも魅力的。

レビューがほぼ映像の話なかり。しかし、この映像を語らずして本作を語ることはもはや不可能。またしばらくしたら、あの映像を観たくてしょうがない日が来ることは間違いない。
みんと

みんとの感想・評価

3.8
テレンス・マリック監督の名作をやっと。
ワールド全開、唸るほどの映像だった。

以前観たドキュメンタリー『ビジョンズ・オブ・ライト~』でも取り上げられてた自然光に拘った撮影は、大自然の神秘性に迫る反面 途方もなく忍耐も強いられただろうなぁ…
マジック・アワーも美しかった。

若きリチャード・ギアVSサム・シェパードの構図。心情描写が繊細で、またそれぞれに切ない。ある意味心理戦でもある。

愛だけじゃ生きていけない。一方愛さえあれば生きていける。あまりに人生に於ける置かれた場所の差が残酷。若きサム・シェパードの嫌味のない裕福さが眩しい。(序盤は)… だけに、疑心暗鬼、嫉妬へと人間味を増す過程が辛い。

涼しい顔をして野心家リチャード・ギアの演技もまた素晴らしい。個人的には少し渋みを増した頃の方が好みだけど。

イナゴの大軍、麦畑一面を焼き尽くす迫力のシーン、テレンス・マリック監督ならではの映像美で描く壮大な抒情詩。
そして、なるほど!音楽はモリコーネ。
遺産目的の結婚詐欺、いやあ、好きな題材ですねえ(笑) 愛憎劇が繰り広げられる訳ですが、時代背景や風光のせいか、昼ドラのようなドロドロしさはなく、美しく切ない物語となっておりました。良かった。
奇才テレンス・マリック監督の代表作とされる本作。
噂に違わぬ映像美。それによりシンプルなストーリーが際立つ。
1978年という時代の旧さは全く感じさせない。

が、ちとハードル上げすぎてたかも。
「シン・レッド・ライン」がなんもと言えず不思議な魅力のある映画だったので。

サム・シェパードが若くて綺麗。
ヒロインの女優はエマ・ワトソンに似てると思った。

主人公カップル、あんたら迂闊すぎるよ。一度ならず二度までも。

物語も含む全体の雰囲気がジェーン・カンピオン監督「ピアノ・レッスン」「パワー・オブ・ドッグ」感を色濃く醸していた。
(こっちが全然先だけど)
TB12

TB12の感想・評価

4.0
俺の中の史上最高に美しい映画リストの上位に来るであろう作品。

撮影に1年以上、編集に2年以上も掛けた作品なだけはある映像美。
本当美しすぎてずっと見てられる至福の映画だった。

テレンス・マリック作品としてはかなり見やすい内容だから万人にオススメ出来る。
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Shawさんが書いた他の作品のレビュー

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いやぁこれでもまだ生ぬるいっしょ。
状況的な問題もあるけど超絶集中しづらかった。
そのつくりのチープさを笑う以外の楽しみ方があんまりできなかった。