『天国の日々』(Days of Heaven)1978アメリカ
とても美しい映像で描かれた三角関係。実はアーサー王物語がベース?
1916年。シカゴの鉄工所を飛び出したビル(リチャード・ギア)は付き合っているアビー(ブルック・アダムズ)、そしてビルの妹リンダと共にテキサスの麦畑に収穫の期間労働に就く。ビルは「色々面倒がないから」という理由でアビーは妹だということにしている。
雇い主の農場主チャック(サム・シェパード・かっこいい!)が余命一年と診断されている事をたまたま知ったビルはアビーにチャックと付き合うようにそれとなく勧める。アビーに一目惚れしていたチャックとアビーは結婚するが、、、
IMDBによるとこの映画のストーリーの源泉は2つあるらしい。
一つはアレクサンドル・デュマの『三銃士』のミレディが英国伯爵をたらし込んで結婚する話。
もう一つはヘンリー・ジェイムズの『天使の翼』。貧しい新聞記者と交際している女性が金持ちに取り入るために彼氏を差し出す話。
『天国の日々』ではこの金持ちに取り入って結婚するという部分が意図的ではないような描かれ方だ。アビーはビルが自分を女性として求めてこないことがやや物足りない。
アビーが人妻になってビルの思いは強くなった感じ。ビルはチャックとアビーの寝室に忍び込みアビーを川に連れ出す。浅い川の流れの中にたちグラスでワインを飲む二人。ビルはグラスを落として見失ってしまう。川底に沈むワイングラスがまるで聖杯のようだ。
あっ!これは『アーサー王物語』のアーサーの妻グゥエネビアとランスロットの不倫も元になってるかもと思った。
『三銃士』『天使の翼』と違って二人の中をチャックから疑われたビルは農場から離れる。ここはピカレスクというより三角関係の恋愛物語になっている。
そしてイナゴが襲来して麦畑が襲われて物語はクライマックスを迎える。燃え盛る畑に地獄の使者の様に現れる蒸気トラクターの姿が恐ろしい。
エピローグは蛇足に思えた。字幕でその後の運命を説明しても良かったかもしれない。
撮影に一年、編集に2年かけてもまとまらず最後にはリンダがナレーションで話を説明する形にして公開したが興行成績は振るわなかった。監督テレンス・マリックが再び映画を撮ったのは20年後だった。
ピカレスクにも恋愛物語にもなりきれず曖昧さが残った作品でした。
撮影監督ネストール・アルメンドロスがアカデミー賞を取った自然光の撮影が素晴らしい。(アルメンドロスがトリュフォー作品のために抜けた為半分はハスケル・ウェクスラーが担当したけど)