ちろる

天国の日々のちろるのレビュー・感想・評価

天国の日々(1978年製作の映画)
4.0
これからは夕暮れの映像が美しい映画といったら間違いなくこれを挙げることになるのでしょう。
揺れる稲穂と日の入りのオレンジに染まる空、そして労働者たちの姿。
山に囲まれた湖畔。
焚き火の周りで踊る労働者たちも
イナゴも馬も、カエルも鳥も全ての映像は美しいのに残酷なラストへのカウントダウンは着々と進んでいた。

開拓時代、雇い主が労働者を手篭めにするという話はよく聞くけど、控えめで横暴さもなく上品で孤独な雇い主と恋人との間で揺れ動くアビーの気持ちが痛いほどわかる。
誰も完全な悪魔でもなくて天使にもなれない。
あの時こうしていなければという後悔など今更しても遅くて、小さな歪みはだんだんと大きくなって取り合え氏のつかない結末を生むのだと想像できなかったビリーの愚かさを悔やむしかない。

ラストのイナゴの大群からの励ましさまでの前半のゆったりと淡々とした時間はまさしく穏やかなヒーリング映像のよう。
神々しささえ感じるのはその名画のような美しい構図とエンニオ モリコーネの音楽のおかげかな。
映画作品としてはありがちとも言える物語でもテレンス マリックの繊細な美学がふんだんに取り入れられるとこうも美しい極上の作品に仕上がるのかと感心した。
因みにこちら、リチャード ギア主演なのに、その存在感が強調されすぎずこの作品のランドスケープのように溶け込む感じ、ほかの彼の作品とは全く違うのもいい。
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