<概説>
未確認飛行物体が突如襲来したアメリカは揺れに揺れていた。果たしてこれから何が起こるのか、民衆は不安で夜も眠れない。騒動の中心人物である宇宙人は、ただメッセージを伝えにきただけにも関わらず。
<感想>
本作の凄いところは正義を宇宙人に与えた点です。
1951年に単なる文明批判をするのなら、敵対項は共産圏や枢軸国でもよかったはず。我等こそが最先端最善であると無反省な、いわばアメリカファースト的思考が凡百の作品なら読み取れるはずなのです。
しかしそれを本作はしない。
むしろアメリカにこそ批判的。
銃撃という米国の象徴的な事件を発端にしつつ、その醜態を誤魔化そうとする姿勢を前面に出す。そして事件が進めば民主主義なる暗愚は暴走し、ついに不当な武力闘争をも正当化する。
「貴様等市民は先の大戦から何を学んだのだ」
民衆の暴走する姿にそんな呆れかえった声が聞こえてくるようで、SFの皮をかぶった社会風刺映画にすら見えます。
ただそうなってくると哀しい哉。
暴力を抑圧するにはさらなる暴力を用いなければならんのだと、認めたくない醜悪な世界戦争史観も見えてしまいます。
そして何より哀しいことは、現存する世界平和の要因に、核武力というものが事実存在する点ですね。
性善説で世界平和が達成されれば、話は違うのですが。