LEONkei

皆殺しの天使のLEONkeiのレビュー・感想・評価

皆殺しの天使(1962年製作の映画)
4.4
越えてはいけない一線、越えなくてはならない一線、境界線に立ちはだかり人は皆、右往左往する。

内側と外側の世界を人々は現在の立ち位置から想像し、希望と恐怖を天秤にかけ生きている。


ある邸宅の晩餐会に招待されたブルジョア階級の人々の、悲劇か喜劇か不条理に満ちた密室劇。

ブルジョアジーは富や地位を守りたい恐怖心と、生きのびたい恐怖心の境界線上に唐突に放り込まれるのは悲劇だ。

似たような登場人物が多く最初は少し頭の整理に戸惑うが、観ていくうちに其々の個性が上手く表現され気づかぬ内に物語に引き込まれる。


見えない境界線を跨ぎ一歩踏み出す事は、今ある世界を捨て去る事になるかもしれない。

越えた先に何があるかなんて誰にも分かるはずもないのに、人は皆見えない境界線に怯えて生きている。

世の中は不条理の塊で、理不尽さを抱き生きて行かなくてはならない。

弱き者はいつも貪られ搾取され喰われるが、いつか反逆される時が来る…かもしれない。

富を振る舞うブルジョア階級や救ってもらいたい時に救わない神を皮肉ってもいるが、階級や地位に関わらず今も人は皆何かに怯えて生きている。

籠もった事はないが、この作品を観れば籠る気持ちが分かるような気がする..★,
LEONkei

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