タイレンジャー

ジェイコブス・ラダーのタイレンジャーのレビュー・感想・評価

ジェイコブス・ラダー(1990年製作の映画)
3.5
これはエイドリアン・ライン監督のキャリアの中では異色作ですよねぇ。『フラッシュダンス』『ナインハーフ』『危険な情事』と大衆受けするヒット作を連発した後に作られたのが、地味〜で気味の悪〜い本作ですから。

ライン監督はスタジオとの交渉の結果、ファイナルカット(最終編集)権を得た上で本作を製作してますから、どうやら彼にとって並々ならぬ入魂の一作だったようです。

本作をざっくりと言うと、悪夢的イメージに溢れたパラノイア映画ですね。悪夢か現実か区別のつかないなかで、無力な主人公が被害妄想を膨らませていきます。

そういう話の構造で言うと『未来世紀ブラジル』のホラー版のようにも見えます。ハッピーエンドかと思いきや…あ、そういうこと…という結末もなんだか似ています。

そんな本作の見どころはもちろん、その不気味な描写の数々。ひとつひとつは「ほぉ…」と思わず見入ってしまうものが多いのですが、全体的に見るとやや散発的で、まとまりに欠ける印象はあります。悪夢的イメージを多種多様にしすぎたのかもしれませんね。

全体的にもう少し統一感を持たせて、それぞれの事象に関連性が強ければ、より「悪夢の集合体」になり得たんじゃないかなーと。