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チャイナタウンのpikaのレビュー・感想・評価

チャイナタウン(1974年製作の映画)
5.0
初ポランスキー。 推理物として見ると思ったよりも肩透かしを食らう感じがあるけど、ノワールを纏ったハードボイルド映画って聞けばなるほど納得!な叙情性を娯楽に昇華している傑作。めちゃくちゃ面白い。

40年代LAの時代性や利権問題を絡めながら、それと平行して主人公視点のドラマを体感し、様々な感情を揺るがされて楽しむという娯楽性が同居していて面白い。
題名にもなっている「チャイナタウン」の単語の裏にある意味など、1で10伝える台詞が印象深く散りばめられていて野暮に説明しすぎない丁度よい塩梅。推理物たるストーリーの流れとノワールやハードボイルドなんかの法則に則った〈味わい〉を同時に両立させる粋な台詞が良い。
それを魅せる役者の演技と存在感がさらに圧巻で、台詞一つに多重な意味を含ませんとする奥行きを演技で表現し尽くしている。
耳に残る音楽がシーンを煽り立て、ずっと眺めていられるほど魅力的なショットの連続に酔える。

名優だってわかってるけど改めて「すげー!」と感動するニコルソンの演技、存在感。ニコルソンが映ってるだけで目を見張るし、軽口叩いたり憂いたり真剣だったり口笛吹いたり色んな表情が逐一魅力的。
フェイ・ダナウェイも負けず劣らず素晴らしく、嘘なのか本音なのか、悪女のようでいて守りたくなるような、ニコルソンが翻弄され愛おしむのも訳ないと思わせる説得力のあるファムファタールっぷり。無表情で感情の読めない姿からフとした瞬間に本音の見える微妙な変化が上手い。憔悴したり必死になったりする姿も最後の最後まで本音なのか曖昧なほど作り上げていて凄い。

脚本家による一稿にポランスキーが盾突いて譲らず押し通した〈ラストの変更〉が良い。これ以上ない完璧なエンディング。
序盤で車のタイヤの下に懐中時計を置くという探偵らしいアイデアを見せる細かい演出が中盤に車のテールランプを壊す展開へと自然に繋がり、さらにエンディングの走り去る車のロングショットへと繋げる上手さ。響くクラクションとロングショットの叙情性はヤバイ。
脚本と演出の高め合いというのか、展開への説得力と画的な面白さを両立させている。
強烈な瞬間の次に見せるニコルソンの表情とアップの長回し、そこに被さる「チャイナタウンなんだから」という台詞の余韻が見事。マジハンパねー!見たあとしばらく立ち上がれず呆然としたよ。こういう余韻を味わえるのが映画の醍醐味。大傑作!最高!
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