ギズモX

死霊のえじきのギズモXのレビュー・感想・評価

死霊のえじき(1985年製作の映画)
4.3
【ゾンビよりも人間が怖い!】

ゾンビの王、ジョージAロメロが80年代に撮ったゾンビ映画。
ロメロ三部作の最後の作品であり、無機質な軍の地下シェルターを舞台にした傑作だ。

ゴア表現が日々進化してた80年代の作品とあってゾンビの貪りぶりがすざましい。
本物の終末だ。後には骨しか残らない。

地上では生者が死に絶え、死者だけが徘徊するようになり、
地下ではグロテスクな人体実験が平気で行われるようになった。
生き残った生存者の人間関係も三部作の中で一番ドロドロだ。

軍人達は『ゾンビ』に登場したウーリーのように身勝手な存在で、科学者は狂った研究のことしか頭にない。
バブという希望の種が撒かれたとしても人間のエゴがそれを刈り取ってしまう。

この映画の登場人物は全員が狂っていて、ゾンビでありながらも人の心を失ってなかったバブこそがあの世界の中で唯一良心を保っていた。
ラストでは知らず知らずのうちに彼を含めたゾンビ達を応援している自分がいる。
バブのその後の話が描かれなかったのが本当に残念だ。

あと、この映画は昼がテーマになっている。
60年代のモノクロ映画『ナイトオブザリビングデッド』は夜を舞台にしていて、
70年代の『ドーンオブザデッド』は朝の場面が印象に残る。
そしてこの『デイオブザデッド』は地上が映るシーンは全部昼だ。
80年代になってゾンビ映画が大量生産され、ゾンビの存在が一般的になったことを表しているのだろう。
彼らはもう滅びはしない。

たとえゾンビだらけの世界になってもバブのように人間の心を失わないでいよう。
バブの敬礼を見るたびにそんなことを思わされる。

ゾンビがとてもカッコいい映画です。
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