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小早川家の秋のメルのレビュー・感想・評価

小早川家の秋(1961年製作の映画)
4.2
小津安二郎の作品としてはかなり後期のもので、関西の造り酒屋の大旦那が家族に隠れて昔の愛人宅にチョロチョロと出掛けて行って…という話。

我が家にはこのビデオテープがあって、以前に観た時は大旦那役の2代目中村鴈治郎の滑稽な演技が面白くクスクスと笑ったものだ。

今回Netflixで改めて観ると錚々たる女優陣と名優揃いであることに驚く。

衣装で言えば司葉子の清楚なワンピース、愛人宅の娘は一体何枚のチュールが入っているのかと思う位スカートが盛り上がったワンピース。
和服姿では未亡人の原節子と愛人の浪花千栄子の襟元の着崩し具合の違いがその人となりを上手に表現しているのが面白い。
杉村春子の演技の素晴らしさは言うまでも無い。

格子戸、暖簾、すだれ、縁側の上に吊るされた提灯など、昔の日本家屋の美しさが随所に映し出されているのにも心が和む。

ひとつ気になったのは和装の喪服に伊達襟(重ね襟)を付けていたこと。今では喪服に伊達襟は殆ど付けないと思うのですが、この頃はそうだったんですね。

小津作品に欠かせない笠智衆もラストにちょっと顔を出して味わい深いセリフを言ってます。
そして全編に流れる関西弁が時に滑稽で時に雅で、それも又日本の美しさのひとつだと実感させてくれてます。
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