エディ

小早川家の秋のエディのレビュー・感想・評価

小早川家の秋(1961年製作の映画)
3.7
京都伏見の造り酒屋一家の隠居した旦那の、一見すると気ままな日々を描くことで、大黒柱の存在の大きさを感じさせてくれる小津作品。娘の結婚など父娘の関係が多い小津作品だが、この作品では隠居しても大黒柱の存在の大きさ主の空気感を上手く描いている。

小早川家は京都伏見で代々続く造り酒屋だが、大手に押されて苦戦している。同業の中でも廃業し大手に吸収されるケースが出てきた。この映画の主人公万兵衛はそんな酒屋の旦那だが、既に隠居をして店は娘婿の久夫に任せて気ままな日々を送っている。
京都の旦那衆らしく店に顔出したり祇園で遊んだりといつもぶらぶらとのん気に過ごしている万兵衛だが、このところちょくちょく姿を消してしまっているので、番頭が若い衆に尾行させたら祇園で判れた筈の愛人とその娘と過ごしていたことがばれてしまい一家は大騒ぎ。
そんな万兵衛だが、死んだ長男の嫁の再婚相手や末娘の見合いなども気にして日々を過ごしていたが、久しぶりに家族水入らずで過ごした嵐山で万兵衛は倒れてしまった。。。

何度も観ている今作だが、あれこれ詰め込んでいるのであらすじが書きにくい。印象的かつ哲学的なラストから考えると、何もしないでのん気な日々を過ごして居ても大黒柱の存在って大きなもので、それがなくなると家族は簡単に瓦解するのだろうなということが言いたいのだと思う。このテーマは、小津のほかの作品にはないかなり珍しいテーマだ。

しかし、その一方で、いかにも小津的な「娘の結婚」「未亡人の再婚」といったテーマも盛り込んでいるので、話がすんなり流れないのだ。

今作は、松竹で数々の名作を生み出してきた小津の他社3本目となる映画で宝塚映画作品なので、新しいことをしたい小津とそうはいっても安定した客が見込める従来のテーマを盛り込もうとした政治的な判断があったように思えてならない。そんなことはないのかもしれないが、そう勘ぐってしまう位にメインテーマのバランスが悪いのだ。

なので、途中はまるで連続テレビ小説のような安っぽいホームドラマ的な印象を受けてしまい、正直いって冗長に思えるシーンも多々ある。

それでも良い映画だがと思うのは、やはりラストが良いからだ。

小津映画の常連である笠智衆はラストのちょっとしか出てこないが、そのシーンがこの映画が言いたいことと感じる。

葬儀を重くなく、むしろほのぼのと描きながらも、死の意味や大黒柱を失うことの大きさを考えさせてくれる力量は大したものだ。