レインウォッチャー

イヴの時間 劇場版のレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

イヴの時間 劇場版(2009年製作の映画)
3.5
「鉄腕アトム」から「フリー・ガイ」に至るまで、人工の知性と人間の関係性、倫理をテーマとする作品は枚挙に遑がない。
この作品もまたその一端であるのだけれど、壮大な本流を語ろうとする話ではなく、あくまでも小さな片隅の噂話のようなサイズ感にまとまっているところに面白みがある。

正直なところ、2010年公開ということでいま(2021年)観るとデザインには時代感があるし、TVアニメ版を劇場用に再編纂したものだからあまり映画ならではの視覚的なダイナミクスなどは期待できない。しかし、近未来の世界観をテンポよく説明し、こちらをスムーズに同期させるエスコートの手際はとても鮮やかだ。
これは同監督の本年度作「アイの歌声を聴かせて」でも発揮されていたところで、信頼のブランドと言えるのかも。もちろん下手なセリフやナレーションに頼るのではなく、映り込むテレビ番組や家庭内の生活様式、交わされる日常会話の端々から適切・適量の情報を与えてくれると同時に、ガジェット的な描写を通した細かいテクノロジーのジャンプ(アンドロイドのこのUI!)を忘れない。デートや旅行のプランを立てさせたらさぞかし洒脱にやってのけるのではなかろうか。

物語はアンドロイドが一般家庭にも普及するとともに警戒/ヘイト勢の声も無視できない、という社会が舞台で、ユートピアでもディストピアでもないちょうど境界を思わせる。
けれど、室内や雨空の場面が多かったり、上述したようにそこまでスペクタクルな何かが起こるわけでもないため、どちらかというとダウナーでグレイな空気を常にまとっている印象があって、誰もまだ声高に口には出さないものの常時うっすらと漂う不安感・閉塞感が表現されているように思う。

そんな中でとある少年と家事ロボット(かなりプロトタイプなもの)の関係性が描かれるのだけれど、このエピソードが実に示唆に富んでいて、腑に溜まるものがある。

少年は幼いときからそのロボットに慣れ親しんでいたものの、あるとき急にロボットが「しゃべらなく」なる。彼はそのことがショックで反ロボット的な、「こいつらに愛情を感じても裏切られるだけなんだよ」という思いを抱えるに至り、終盤には何度も物言わぬロボットに言葉を吐露する場面がある。「お前はずっとどう思ってたんだよ!?」ロボットはじっと彼を見返す…。

これ、ロボットということで純化されているものの、実は相手が人間であっても同じことだよな、と思った。
結局、他者の心のうちはどう転んでも外から正しく知るなんてことはできなくて、投げかけた言葉に対する答えはいつも「わたし」の中にしかない。他者は、常にわたしの鏡だ。
わたしたちに唯一最善できるのはそれでもコミュニケーションと呼ばれる行為を諦めないこと、反射音を聴くことをやめないことだけ。期待したものと反応が違っても、そこで耳を鎖ざしたり力づくで従わせたりすることは、最も傲慢で人間を放棄するに等しいとさえ言えるのかもしれない。

さて物語においては、最終的にこのテの作品で定番の「ロボットが命令を越えた行動をとる」ちょっとした展開があるのだけれど、ここは是非いろいろな方に観てほしい。感情や魔法的な、「なんか奇跡」に頼ってたたみこむ展開の作品も多いところ、今作はシチュエーションとロジックで乗り越える。そこがアツいしそれがイイ。

他のユーザーの感想・評価

つ

つの感想・評価

4.0
途中まで観るのがけっこうしんどかったが、最後まで観てよかった。
(2013/5/9)

映像がとても良い。デジタルアニメーションの神髄かってくらいキレイ。喫茶店「イヴの時間」の店内なんてあまりに美しくてタイトル画面をずっと見ていたくらいです。
1話完結のオムニバスを1本の作品にしているので、ストーリーごとのつなぎに少々違和感を覚えましたが、最後のマサキのエピソードは泣けました。ああいう子供の頃からの…とかしゃべりたかった…とかって反則だよね。ちびっこマサキもすごい可愛い。

リクオ役は福山潤さんだったんですね! リクオがあの痛いルルーシュさんと全裸のトーリと同一人物とは。すごいな、この人うまい。
deco

decoの感想・評価

2.5
なんとなく見始めたら、とても良くて
ウルっときた。。
胸が切なくなった。

このレビューはネタバレを含みます

ロボットが当たり前のように普及してる時代で、社会全体がロボットに辛くあたる風潮はなんなのか🤖ずっと違和感がありました。(家電扱いだとしても、普通もっと大切にすると思うけどなぁ…😳)

あと主人公や男友達にう〜ん…。
主人公、勝手に人のカメラ覗き見(&公開)したらダメでしょ…
お友達、怒りのスイッチが分からない&感情の起伏が分からない…

描こうとしてる世界観は好きなので、色々と勿体ないなと感じました。続きが出たら観たい🙄というかこれから面白くなりそうなのに。
近未来、少年が「人間とロボットを区別しない」喫茶店でロボットのことを知る話。相手が誰であっても、決めつけず理解しようとする姿勢が大事だと思いました。
アイの歌声を聴かせての監督の作品とゆうことで観賞。

結論から言うと正直、アイより好きかもしれない。とゆうのも、アイではアンドロイドのシオンがどうしても人間味が薄くて、(意図してそう描いているのだろうけど)ちょっと不気味に感じてしまった。しかし反対に、今作ではアンドロイドの二面性をよく描かれていて、どこか人間臭さすら感じられた。

伏線を散りばめておいてロクに回収ぜずに、ムリヤリ終わったのは、ちょっとどうなのかと思いはしたけど、全体的にはスゴく楽しめたかな。
Julia

Juliaの感想・評価

3.7
キャラクターデザインや演出が好みでした。
SF要素の強い作品かと思いましたが、SF面はあまり掘り下げられていません。
反面、ひたすら各キャラクターの感情の浮き沈みを描いた作品になっており、人間臭さの描写が本作の一番の魅力だと思います。
人間とロボットを区別しない喫茶店を舞台にした話。

映画『ブレードランナー』を想起させられる世界観。

ストーリー・作画・色調、全てが無機質で、決して取っ付きは良くないが、ロボットを介した人間探究と解釈して、興味深く観られた。
アンドロイドと共生する社会で、アンドロイドの尊厳や感情は??というもろ『A.I.』的な作品を、我々日本人が共感しやすいテイストで描いた作品。

「深さ」でいえば『A.I.』ですが、「共感」でいったら間違いなく今作に軍配が上がります。

アンドロイドに依存する「ドリ系」と呼ばれる人が今作に登場しているところが印象的。
今作の世界では批判の対象となっていますが、もしアンドロイド実用化されれば、リアルでも増えそうですね。むしろ多数派なんじゃないかと思います。

ラストは根本的に解決されていないけれど、一つの答えが明示されていて良かった。
ナギー

ナギーの感想・評価

3.8
Amazonプライムの配信でもうすぐ終了するとのお知らせにより、駆け込み視聴。

じっくり考えさせられました。人間と見分けをつけるためにアンドロイドの頭上にリングを付けるアイディア。喫茶店内での、ブレードランナーさんとの呼びかけ。なかなか凝った作りでした。

機会があればテレビ版も見たくなりました。

テックスー!
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