丽遥

打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?の丽遥のレビュー・感想・評価

3.9
小学生の恋愛よい~~!声変わりとか、性欲の萌芽とか、女子の方が身長が高いとか、大人と子供のあわいに入りかけている瞬間が切り取られているのがいい🫰

50mの勝負にどちらが勝つかによって運命が2分されるのを、どちらもパラレルに描き出しているのがよかった。現実と仮定が並置されていることで、作品における仮定の重要性が増していると思う。実際に起こった現実よりも起こりうる可能性のあった仮定を想起することがなずなにとって救いになっていたような気がする。

冒頭の寝転ぶなずなのロングショットは、主人公の視点ショットで撮られていて、主人公の恋心、そしてなずなを半ば神聖視している感情が読み取れる。水面下に立っている主人公にとってなずなはプールサイドに寝転んでおり、手の届かない存在(手を伸ばせば届きそう)なのだ。

友達が競走に勝った現実では、なずなは友達にとられ、しかもなずなの家族によってより遠い存在になっていくが、仮定では対照的になずなはどんどん近づいてくる。
なずなはプールに足を浸し、ひとりでにプールに入り、そしてプールに仰向けに浮かび、共に花火を眺める。このとき主人公となずなは冒頭のなずなと同じポーズをとっており、なおかつ水面という同じ領域にいるため、なずなと主人公の物理的・心理的共に距離の近さが浮き彫りになる。
また同じ水に包まれているという点でもこのことは強調されている。その上、花火師の「花火の真下が花火を見るための特等席なんだ」という言葉からも並んで花火を下から見る2人の関係性の特別感が伝わってくる。

ただ、現実と仮定どちらの未来を進んでも結局なずなは主人公の元を外れていくことになる。「次会えるのは二学期だね」という言葉を笑顔で言うなずなは切ない。
丽遥

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