YokoGoto

打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?のYokoGotoのレビュー・感想・評価

3.6
<女子は、すぐ“女性”になり、男子はその後を追いかける>

もちろん、初見ではない、この作品。何度も観た作品ではあるが、レビューも書いてなかったし、何度目からの再見。

岩井俊二監督にも、この時代があった。

放送当時は、TV番組として放映されたものなので、映画というよりもTVドラマ風の作りになっている。映画として観ると、だいぶ物足りなさとTVドラマ感が気にはなるのだが、だがしかし、『岩井作品の始まり』という意味では、圧倒的な印象を残す作品であることは間違いない。

何が良いかというと、だんぜん音楽だ。

ラスト付近のプールのシーンで流れる“Forever Friends”が最高に素晴らしい。これが、この作品の核だと言ってもよいくらい、音楽の使い方に鳥肌が立つ。

それまでの子どもたちのグダグダ感が、一気に大人の世界に変えていく音楽の力。このシーンは何度も繰り返し繰り返し見たくなる、名シーンである。

そもそも、このお話は『花火を横からみても丸いのか?』という事を、子どもたちが探しにいく話ではあるが、実は、この花火はどうでも良いものになっている。(笑)

子供の頃は、夜に友達と花火を見るというだけで、非日常のセンセーショナルなものだった。その非日常的なシチュエーションを使うために花火になっているだけであり、ただひたすら、主人公2人の夏物語を描いているのである。

このシナリオを観ると、やはり、女子というのは、あっという間に女性になるが、男子はしばらく男子のままで、急に大人になっていく。逆に、急に大人にならなければならない男性は、しんどいだろうな、、、、と思う。

実に、子どもっぽい男子達のグダグダ感と、同い年なのに、すでに人生悟っている美しい女子。(奥菜恵さん)誰もが通る道ではあるが、それを映像として観せられると、誰もが共感するだろう。

前半と後半は、『if:もしもこうだったら〜』という、異なる2つの設定で展開されるので、前半と後半の作り方が大きく違う。
前半は、平坦なホームドラマ風になっているが、後半は、ドラマチックな回想シーンのようだ。そしてやってくるプールのシーン。

45分間にまとめられた子どもたちの夏物語が、こんなにも支持されているのは、こういうまとめ方にあるのではないかなと思う。

全体的に、作品の古さは感じるものの、岩井監督にもこの時代があったのか。そう考えると、さらにジーンとしてしまうかもしれない。
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